考察「かがみの孤城」で見る、中学生と不登校
前回のブログ「発達障害・グレーゾーンの子と親、中高生にオススメの映画7選」でも紹介した、辻村深月さんのベストセラー小説が原作の「かがみの孤城」が、中学生の不登校にまつわる諸問題を考える上でもとても有益だったので、事例として例にあげながら、うちの子達が進学しなかった地元の公立中と、受験して進学した私立中高一貫校の話も交えつつ、私なりに考察してみたいと思います。
※【ネタバレ】注意!
数々の謎や、"あの人"の正体や、ストーリーの結末が気になる方は、劇場版だけでも先にご視聴の上、ここに戻ってきて下さいね。
情報量多くなっちゃったので、目次つけますね。
<この記事の目次>
■公立中と私立中(中高一貫)の比較考
うちの子達3人は、地元の学区の公立中学に進学せず、中学受験して、ゆるい感じの私立中高一貫校に進学したため、以前、劇場版を地上波放送で一緒に観てた時に、子ども達の共通点が"同じ中学"だと分かると、「うわー、雪科第五中って、どんだけヤバい学校なん?」などと言ってましたが……。
いやいや、君たちが行く予定だった、学区の公立中って、結構こんな感じよ?
(むしろ、うちの子達にとっては雪科第五のほうがマシ、まであったかも……)
だから、お城に集まる7人の不登校中学生達を、私は中学受験しなかった「if世界の我が子」と重ねて観ていました。合理的で生意気なマサムネくんや、空気が読めないウレシノくん、引っ込み思案のこころちゃん…とか、ちょっとずつ、うちの子と似たところがある子もいるし。
うちの学区の公立中学は、簡単に言えば「昭和」の香りが残る体育会系の校風なので……。
もし、うちの子達が地元の公立中学に進学していたら、長男はほぼ100%上級生達にいじめられていたし、過敏性腸症候群と聴覚過敏で疲れやすい次男も、マンモス校で通学距離も遠く、部活も全員強制参加で負担が大きくて、どちらも確実に不登校になっていたと思います。
適応力高めのLDグレーな長女は、コロナの影響がなければ公立中に通えた可能性もあるけど、ICT化も遅れている上、先輩後輩の上下関係が厳しく、自由奔放な彼女にはキツかったかも。
その点、中学受験して3人共進学した私立中高一貫校は「令和」にアップデートされてるので……。
私立でも、子ども達にトラブルや学校への不満が全くないわけではないけど、今年の春、高等部を卒業した長男も「あの学校でなければ、おれは通えなかったと思う」とポツリと言ってました。
もちろん、公立中でもICT化が進んでたり、発達障害対応が充実している学校や自治体もあるし、私立には支援級・通級はほぼないので、制度的には公立のほうが支援体制が整っているでしょう。
当然ながら、公立中で楽しく充実して過ごせる子達も多いでしょうし、あくまで本人の個性と環境の相性やギャップが適応へのネックであり、「公立中だから」不登校になるってことでもないと思います。
また、どんな私立中にも、いじめや思春期のトラブルはあるし、成績や部活実績などへの圧の強い学校や、上下関係が厳しい校風の学校もあり、「私立中だから」安心ってワケでもないでしょう。
実際、うちの子達の私立中にも、不登校の子は各クラスにポツポツいて(特にコロナ以降)、そのうち復帰する子もいれば、退学・転校・他校の高校受験する子もいます。
でも、子どもが不登校になっても、私立は良くも悪くもほったらかし&自己責任だし、欠席が続けば担任の先生から、親にメール・電話確認程度はあるかもですが、こころちゃんのケースのように、先生の家庭訪問やクラスメイトが家に毎日プリント届けにくる…なんてことは、まずありません(こちらからお願いすれば、学校で面談などはしていただけると思います)。子ども同士は、クラスの不登校中の友達とも一緒にオンラインゲームしたりもしてますが…。
まあ、どんな環境にもメリット・デメリットはあります。
そして、「ああいう子はどこにでもいる」と萌ちゃんが言ってたように、クラスの空気を支配するのが得意な真田さんタイプの子や、事なかれ主義的な担任の井田先生タイプの先生は、公立・私立関係なく、本当にどこにでもいるでしょう(うちの子達の私立中にも、35年前に私が通った田舎の公立中にも)。
■不登校自体は悪くない!が……中学での現実問題は内申点
私は、不登校になること自体はいいも悪いもなくて、その子のその環境への適応の結果の表れに過ぎないと考えているので、不登校になる子自身に問題があるかのように思われたり、その親が子育てを間違ったかのように決めつけられるのも、違うと思います。
中には、ポジティブに主体的に、充実した不登校ライフを過ごしているご家庭もありますしね。
「かがみの孤城」では、それぞれの子の様々な家庭環境や親の関わり方が描写されていて、中には不適切な家庭環境や親の養育態度の例もありますが……家庭環境や「親の育て方」だけが原因であれば、学校はむしろ避難所になれるハズで、子だけ、親だけ、学校だけに不登校の原因があるとも思いません。作中で描写されているように、いろんな要素が絡み合ってのことでしょう。
だから、不登校自体は決して悪いことではないのだけど、大事なのは、その子の今とその後です。
(特に進路面では、小学校や高校よりも、中学段階での不登校の影響力は大きいと思います)
高校進学を考えた場合の現実問題、中学で不登校になると、欠席が多かったり、定期テストを受けてなかったりして、内申点が厳しくなります。
多くの自治体では、公立高校の受験は内申点の比重が大きく、私立高校の推薦入試も「内申点が平均〇以上」「欠席日数が◯日以下」等の出願条件があることも多いです。
また、地域・学校によっては、中1・中2からの内申も高校受験に必要だったり、東京都の実技教科の評定2倍などのように、独自の換算方式が取られていることも。
うちの子達は、たとえ不登校にならなくても、様々な面で内申点が取れるタイプではないので、高校進学という面でも私立中高一貫校でよかったと思っています。
各学校の規定にもよると思いますが、うちの子達の中学では、中学段階での欠席日数や成績は、高等部進学にそんなに影響ありません(ただし、問題行動が多いと高等部に進めないことも)。
高等部からは、大学の推薦・総合型入試を考えている子は、高1から欠席日数や評定平均等を意識する必要があり、成績や出席日数がよほどの場合には留年もありますが…。
でも、もし、お子さんが中学で不登校になっても、進路も人生も全く「詰み」ではないですからね。
■「かがみの孤城」の子ども達の、その後の選択と進路
まずは、心と身体を十分休めて、本人の学びたい意欲が回復したら…ということが大前提ですが、視野を広げて柔軟に考えれば、中学時代の選択肢も、不登校後の進路も、沢山あります。
ここからは、「かがみの孤城」の子ども達の「その後」を例に、中学で不登校になった子の選択肢を詳しく解説していきます(※劇場版では、それぞれの「その後」は軽く触れる程度だったので、原作小説・コミカライズ版の内容をもとに執筆しています)。
お節介情報も追加でいろいろ調べてまとめたので、全部読むとちょっと長いかも。
【スバルくんの場合】定時制工業高校に進学
両親が離婚し、祖父母と暮らすことになったスバルくんは、茨城の学校から中3で雪科第五中に転校してきたものの馴染めず、その後はほとんど欠席。いわゆる"ヤンキー"なお兄ちゃんの影響を受けて、夏休み中に髪を脱色したりで、孤城の仲間達に引かれたりもしましたが……。
無気力だった彼も、お城でマサムネくん達と最新ゲームであそんだ影響や、無口な祖母の理解もあり、中3の秋頃から再び勉強を始め、公立工業高校の定時制へ進学し、ゲームクリエイターの道へ…。
彼が秋葉原の修理屋のおじさんから「こういうことに興味あるなら、工業高校はそういう授業ばっかだぞ」と聞いたように、専門高校(職業高校)は、専門性の高い知識や技術を学べる授業が中心。
専門高校には、工業、農業、商業高校…等がある他、中学卒業者対象の専門学校である高等専修学校は不登校の子も入りやすく、また、情報処理科、建築科、美術科…など専門学科がある全日制の高校も。
これらの専門性の高い進学先は手に職つけたい子や、特定分野に特化したい子に向いているでしょう。
定時制高校は、夜間のイメージがありますが、今は2部制/3部制で昼間に通える学校も。
公立高校に定時制が併設されている場合もあり、スバルくんもおそらくソレだと思われ、部活などの一部の活動等は全日制の生徒と一緒にできるかも。
毎日通学が基本で、授業は一日4時間程度。4年で卒業する人が多いようです(単位制の場合、3年での卒業も可能)。経済的に厳しい場合も、仕事やアルバイトしながら通えます。
入試は、学力試験+内申点+面接が必要なことが多いようです(スバルくんの場合、転校前の学校の中1,中2の出席日数と内申はあったのかも。髪を整えて面接も受けてましたね)。
また、不登校等で中学の内申が厳しい子は、近年生徒数が急増している通信制高校や、東京都などのチャレンジスクールなどの選択肢も、入試で調査書を重視しないのでいいと思います。
もちろん、現在は私立も高校実質無償化の対象ですし、全日制私立高校の学力試験重視型の一般入試の道もあります(ただし、最低限「評定に1がないこと」などの出願条件があることも)。
【アキちゃんの場合】公立中学を留年
かなりのレアケースではありますが、アキちゃんはフリースクール「心の教室」の前身である学習塾の先生の勧めで、公立中学を留年(原級留置)しています(一応、制度上は可能なようです)。
部活トラブルで後輩達から「いじめっ子」として見られ、学校に居づらくなったアキちゃんは、母の再婚相手から性的虐待らしき被害を受け、家も安全な場所でなく、大学生と付き合ったり街をフラフラしてたので、お城がなくなったら一番心配な子でした。
そこを、亡くなった祖母の知人の、ボランティア的な私塾の先生が手を差し伸べてくれ、勉強をイチからやり直し。そして、遠回りしたけど、大学の教育学部に進学、更に大学院を卒業後、今度は自分が子どもを助ける側の大人に……。少しくらい寄り道したって、ちゃんとした大人になれる好例でしょう。
現実世界では、現在、公立中学では、不登校や病気療養期間が長かった生徒等に、ごく稀に留年する意思があるか確認が来るケースがあるようで、成績や出席日数等が理由で強制的に留年とはなりません。
ただし、私立中学の中には、学校規定で出席日数や成績条件を定め、中学でも留年となる場合もあり、また、中高一貫校でも、高校課程に進む際に一定の条件や進級試験がある場合もあります。
【こころちゃんの場合】学区の公立中学に復帰
主人公のこころちゃんは、クラスでいじめに遭ってトラウマレベルの恐怖体験をし、自宅から出れずに引きこもっていました。最初は母親も戸惑いながらもフリースクールと連携して見守り、いじめの事実が判明してからは、担任の先生にも毅然と対応しました(ただし、相手の子は反省もせず…)
2年生への進級を控えた3学期に、フリースクールの喜多嶋先生の尽力もあって、学校側と話し合いを重ね、他の学区の公立中学への転校も希望すれば可能な状態でしたが、こころちゃん自身は雪科第五中への復帰を選択。ただし、いじめの中心人物・真田さんやその取り巻きの子達、及び、担任の井田先生とは、別のクラスにすることを学校復帰の条件にしています。
こころちゃんのように、いじめ被害を受けた子が元の公立中に復帰する場合、管理職の先生に相談し、クラス分けや担任について、学校側に配慮をお願いすることができます。話し合いが難しい場合、両親揃って面談したり、支援者やスクールカウンセラー等、第三者に間に入ってもらうのもいいでしょう。
こころちゃんが感じた通り、いじめられた側が出ていかないといけない、なんて、本来おかしなことですからね。
また、別の公立中への転校は、学校選択制などを採用していない地域でも、同じ自治体/隣接自治体の「学区外修学/区域外修学」を希望する場合、自治体の教育委員会に直接相談の上、申請等の手続きを経て許可されることも(うちの自治体では、いじめ・不登校の他、障害、転居や通学距離、親の就労上の都合等の理由等でも申請できるようです)。
【マサムネくんの場合】私立中学に編入
ゲームおたくのマサムネくんは、自分の嘘がきっかけとは言え、男子グループから陰湿ないじめを受け不登校に。ただし、マサムネくんちは、かなり割り切った考え方のご家庭で、不登校に理解があるとも言えますが、特に父親が「公立中なんて行かなくていい」「公立の教師は低レベル」等の発言なども…(その点、マサムネくんのほうが、考え方のバランスが取れています)。
また、マサムネくんは結構勉強ができるようで、不登校中も学習塾には通っていた様子。
そのため、父親の知り合いの子が通う私立中学を事前に見学し、編入試験を受けて合格。3年時進級のタイミングで転校することに。少し通学時間がかかりますが、校風は合ってそうな感じです。
私立中学への編入は、欠員分の補充に若干名の募集枠があることも。うちの子達の私立中でも、毎年、学年に数名程度、様々な理由で出ていく子と入ってくる子が同程度います。
ただし、HP等で募集の有無や人数、選考方法の詳細等を公表していない場合もあるので、希望の中学に直接問い合わせてみるといいでしょう。
(参考:東京都の私立中の転・編入は、東京私立中学高等学校協会に一覧リストが掲載)
ただし、私立中高一貫校の場合、特に進学校では学習カリキュラムが公立よりも先に進んでいるため、公立中から編入するなら、自宅学習や塾などで、そのギャップを埋めておく必要があると思います。
また、不登校生を積極的に受け入れている私立中学や、通信制高校と連携しているフリースクール(在籍は学区の中学)等、比較的途中から入りやすい学校や、不登校生のメンタルケアや遅れていた学習面のフォローに手厚い学校もあります。
【フウカちゃんの場合】フリースクール中心に学び直し
フウカちゃんは幼少期からピアノの才能があったことで、そこに英才教育全振り…という、かなりハイリスクなルートを通ってきました。それでプロになれる人もいますが、フウカちゃんはある程度で伸び悩み……。でも、小学校時代から友達ともあそばずに、ピアノしかさせてもらえずに来たので、「勉強できそうな見た目」に反して、勉強は全然できない状態……。
フウカちゃんの母親を少しフォローすると、劇場版では練習を見守る圧がすごい印象でしたが、小説・コミカライズ版では、父親と死別後、シングルマザーで昼夜休日も問わず働き詰めで娘のレッスン代を捻出していた…という背景描写があり、フウカちゃんも、そんなお母さんを気遣う優しい子です。
ある時、フウカちゃんは、こころちゃん達と同じフリースクールを自らたずね、喜多嶋先生から「勉強は一番ローリスク」「ピアノで苦しい思いをしないためにも、今から勉強をやってみない?」と勧められ、自分でもお城で勉強を始めます。
そうなんですよね。何をするにしても、勉強しておいて損にはならないし、才能を悪い人に搾取されないためにも、最低限の読み書きくらいは必要だと思いますし、もし、ピアニストになれなかった場合でも、近い道や別の道につながるリスクヘッジにもなりますから……。
また、コミカライズ版では、2020年のコロナの影響なども追加描写されていました。
現実世界でも、コロナを経て、不登校の子も急増し、フリースクールや通信制高校などの数も増え、オンラインでも学べる環境が普及してきたため、不登校の子の選択肢もかなり増えたように思います。
ただし、作中の「心の教室」は非営利のNPO法人運営フリースクールのため、たぶん、良心的な料金設定だと思いますが、中には私立中学と変わらないほどの費用がかかるフリースクールも。
フウカちゃんのように経済的に厳しい場合、(学校復帰を前提にしているものの)各自治体の「教育支援センター(旧適応指導教室)」なども公費で運営されていますし、近年では公立の不登校特例校の設置や、公立中に校内フリースクールを設置する取り組みなども始まっていますからね。
【ウレシノくんの場合】海外留学(親同伴の教育移住)
空気が読めず、からかわれやすいタイプのウレシノくんは、実家がお金持ちだからか、同じ中学の塾の友達グループに気前よくおごってあげてたら、いつの間にか利用されるように。それで父親が怒り、相手の子たちの親からも注意があったものの、友人関係がうまくいかなくなって不登校に。
母親は、やや過保護気味とはいえ理解と愛情が深く、ウレシノくんは早い段階からフリースクールに通い、喜多嶋先生を信頼しながら、不登校生活を送っていました。
そして、ハワイで留学するリオンくんの話を親にしたところ、「1人で行かすのは心配だけど、ママが一緒ならありかも」と、海外留学への道を探すことに(父親は日本で仕事)。
親同伴なので、「教育移住」という面もあると思いますが……。経済的に余裕のあるご家庭等なら、そういう選択肢も。ウレシノくんは自己主張もでき、素直でまっすぐなので、海外の少人数クラスでの体験学習や生徒の自主性を尊重する学校などで、のびのび学べる環境は合っていると思います。
また、日本国内でも、インターナショナルスクールや、海外の学校法人等が運営している全寮制のボーディングスクール、「オルタナティブスクール」「もう一つの学校」等と呼ばれる、少人数での欧米型の教育理念や独自の教育カリキュラムを取り入れた教育施設等があります。
ただし、いずれも費用は高額で、日本の教育基本法の定める「学校」に該当する一条校ではない場合が多く、日本の一般の高校進学を希望する場合は、環境や学習ギャップにも注意が必要です。
【リオンくんの場合】ハワイ留学から帰国し、公立中へ
7人の中では例外的な扱いのリオンくんは、病気で長期療養していた姉の死後、なかなか悲しみから立ち直れない母親から遠ざけられ(守られ?)、本来進学するハズだった学区の公立中ではなく、得意なサッカーをのびのびできるハワイの全寮制の学校に単身留学しますが、言葉の壁などであまり馴染めず。時差の関係で、日中は現地の学校に通い、授業後に日本のお城の仲間達と交流していました。
リオンくんの本音は公立中に行きたかったようで、「留学がなければ普通に雪科第五中に通う子」なのでしょうが、イケメンでスポーツもできて明るく優しい彼が、もし、雪科第五中に入学していたら、ソッコーで真田さんにロックオンされてそう……。うーん、どちらが良かったのでしょうね😅
そんなリオンくんは、最終的に自分の意思で帰国を決意し、雪科第五中に転校。彼だけはお城の記憶を残したまま、2年生登校初日に、こころちゃんと再会して劇場版はエンド。
どんな場所でも、友達や仲間、理解者がほんの少しでもいれば大丈夫ってこと、ありますよね。
きっと、二人とも、そして他の子ども達も、お互いに助け合えればなんとかなる…!と思える素敵な終わり方でした。
■「絶対」はないけれど、選択肢は沢山ある
このように、それぞれの子達は、それぞれの選択をして前に進んでいきました。
そうして生きていれば、またみんなに会える未来が待っていることが、お城の記憶をなくしたとしても、希望になっていたのでしょう。
そして、喜多嶋先生がこころちゃんに「ひとつ、覚えておいてほしい」と話した…
「学校は、絶対に戻らないといけないところってわけじゃない」
「こころちゃんには選択肢がたくさんあるの」
…という言葉のように、"絶対にこうでなければ、ちゃんとした大人になれない" なんて、正解のルートはないと、私も思っています。
また、昭和の頃は、不登校になると選択肢がほとんどなく、家がだめなら非行に走るくらいしか居場所もなくて、親も「学校は行くのが当然」て感じでしたが、時代を追うごとに選択肢も増え、「学校なんて行かなくて構わない」と考える親も増えてきた…と、作中を通して描かれている気もしました。
少しずつ、教育のあり方や、不登校に対する認識も、変わってきているのかもしれませんね。
それから、一見どんなに八方塞がりの状況に思えても、必ず手を差し伸べてくれる人はいることを、この作品は伝えてくれているようにも思いました。
それは、友達かもしれないし、親かもしれないし、赤の他人かもしれないけれど……大事なのは、ちゃんとそこに目を向けて、差し伸べられた手を掴むことだと思います。
今年の強烈な猛暑と残暑の疲れもとりつつ、ようやくきた読書の秋に……。
参考:
辻村深月著「かがみの孤城」上・下巻 ポプラ文庫(原作小説)→Amazon で見る
同・作画/武富智 全5巻 ヤンクジャンプコミックスDIGITAL(コミカライズ版)→Kindleで読む
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