アニメ&マンガ「メダリスト」は、学校でできないことが多い親子さんにも超オススメ!

アニメ「メダリスト」放映/配信中(テレビ朝日系列/毎週土曜日 深夜1:30-)ですね。
作画も動きもOP/EDも全てが素晴らしかったので、思わず原作マンガ(著者・つるまいかだ 講談社「アフタヌーン」連載中)を、最新12巻まで大人買いで揃えてしまいました。
深夜枠のアニメ&青年誌連載のマンガですが、親子で安心して見られると思います!影響されて「自分もフィギュアやりたい」とかお子さんに言われると、親はちょっと困るかもですが……😅
ご存知ない方のために、簡単にストーリー紹介を。
小学5年生の少女・いのりは、学校ではできないことが多くて居場所がない日々を送るが、姉の影響でフィギュアスケートに憧れ、密かにスケートリンクに通っては独学で練習していた。
そんな時に偶然出会ったのが、元アイスダンスの選手・司。
司もまた、かつてフィギュアスケーターに憧れたものの、始めた年齢や環境に恵まれず、遅咲きのアイスダンスの選手として全日本まで出場するも、夢破れて現在フリーターの身。
いのりのコーチとなることを決意した司は、二人三脚でメダリストを目指すーーー。
……という、フィギュアスケートを舞台にしたスポーツ師弟物語。
今期アニメはおそらく、原作マンガ1〜4巻くらいまでの内容だと思われるので、このブログでは、そこまでのストーリーの範囲を中心にお話しますね。
本題に入る前に、少し私の感想を……。
■学校で「何もできない子」だった少女・いのりさん
アニメ&原作1話のいのりさんの、学校での「何もできない子」の日々の描写は、似たような特徴のある子を持った親としては、正直つらかったです(アニメのほうが、表現がややマイルドです)。
特に、グループ発表の準備に入れてもらえなくて、クラスの子達に「何もしないで」と迷惑がられるところとか、小学校時代のうちの長男の姿と重なって、胸が締め付けられる思いでした……。
(ただ、いのりさん自身は、この日々への思いを「冷たい気持ち」と表現し、スケートへの原動力として大事にしています。もう、偉い子部門優勝ですね)
いのりさんの母親も、最初のほうは子どもに理解がない印象ですが、実は彼女も周りから、"あの子ができないのは親の育て方のせい" と見られ、いのりさんの日々のフォローでお疲れ気味(宿題をマンツーマンでみる描写など、他人事ではなく……。彼女は決してネットで言われてたような「毒親」なんかじゃありませんよ!)。
お姉さんの挫折体験もあって、好きなことを伸ばすよりも、失敗しないための子育てに注力し、リスクの大きなフィギュアへの道は反対なので、いのりさんもやりたいと言い出せず……。
そんな八方塞がりな少女の人生に、救世主のように現れたのが、司先生。
明るく元気な司先生は、一見するとEテレの体操のお兄さんみたいな、熱血ムキムキ体育会系ですが、実は大変な苦労人で自己評価も低かったりします。
でも、「ダメじゃない部分がある自分になりたい」「わたしは恥ずかしくないって思いたいの」と涙ながらに訴えるいのりさんの姿に心動かされ、全人生を賭ける勢いでコーチを引き受けます。
「5歳から始めるのが常識」なフィギュアを、いのりさんは11歳からの出遅れスタートでしたが、司先生という理解者を得て、水を得た魚のように、周囲に脅威を与える程の爆速で上達していきます。
「ほらね。人と環境にさえ恵まれれば、こういう子は本当にすごいんですよ!」って、私も全世界に向けて声を大にして自慢したくなるほど、いのりさんは心身ともに目覚ましい成長をしていきます。
……と、「メダリスト」について語りたいことは山程あれど、ここで私が特筆したいのは、司先生の子どもへの誠実な接し方です(以下、本題)。
■【考察】「メダリスト」司先生に学ぶ、子どもへの接し方で大切なこと3つ

司先生にはいのりさんが最初の生徒なので、コーチ経験も初めてでしたが、基本的かつ本当に大切な、子どもへの接し方の姿勢を始めから心得ていました。
司先生の接し方は、スポーツのコーチだけでなく、親や先生など、小学生くらいの子どもに接する多くの人に、きっと参考になると思います(中には、司先生と合わない子も登場しますが………)。
では、ベストセラー子育て本の著者が、子育てや教育現場でも参考になると感じた、「メダリスト」司先生に学ぶ、子どもへの接し方で大切なこと3つを、まず挙げますね。
では、それぞれ詳しく解説&考察していきましょう。
子どもにも丁寧に説明を尽くし、意思を尊重する
初出場の大会で優勝するために、限られた時間の中、何にどの程度の練習時間をつぎ込むか、司先生はいのりさん本人と作戦会議しました(原作1巻)。
その際、目玉のジャンプを "いちご🍓" にたとえ、必勝技を狙う「ショートケーキ作戦」と、基礎力UPの「いちごたい焼き作戦」と名付け、それぞれのメリット・デメリットを説明した上で、どちらにするか自分自身で決めさせたのが、アニメ3話でも印象的でしたが……。
このシーン以外にも、司先生は、「今、どんな練習がどれぐらい必要で、何の目的のためにこれをするのか」「コレコレこういう理由で、〇〇を目標にしよう」「この大会でこんな実績があれば、今後こういうことにつながる」など、何をするにも、事前にいのりさんに、とにかく説明を尽くしています。
司先生は186cmの長身ですが、いつもひざをついて、常に子どもと同じ目線に合わせて話し、相手が小学生でも関係なく、分かる言葉で丁寧に一つひとつ説明します。
そして、自分のことを大人が勝手に決めてしまわないように、その都度、意思確認と決定権を与えている姿勢の誠実さが、いのりさんとの揺るぎない信頼関係にもつながっていると思います。
いのりさんも、それまで親や学校の先生など、大人のサポートが多い子だったので、それ以上迷惑かけないように、相手の意を汲んだ選択をするクセがついてしまっていました。
でも、司先生に、「俺の意思を読もうとしちゃだめだ」と諭され、私はこうしたい、こうなりたい、こういうことはしない、こうできるように助けてほしい、と、言葉と行動で強く意思表示できるようになっていきます。失敗を心配するお母さんにも「私、大丈夫だよ」と、キリッと言い切れました。
信頼関係を築けた大人の理解と、元からあった本人の強い意思を、自分の言葉で表現できるようになったことが、彼女が爆速で成長できる秘訣ではないか、と私は推察します。
親や学校の先生が、司先生のようにその子の意思を尊重するには……
<身近な実践ポイント>
選択肢のメリット/デメリットや、「なぜ、そうする必要があるのか」の理由などを、子どもにわかりやすい言葉で噛み砕いて、本人が理解・納得できるまで説明する
その上で、「どう思う?」「どうしたい?」と意思を聞き、本人が決めたことには「もし、それで失敗しても、こうすれば/こうするから大丈夫」などと安心させてあげる
子どもをよく観察し、根拠を持って、具体的にほめる!
司先生は、とにかく褒め上手。同じクラブの瞳先生が、他の保護者に気を遣うほど、いのりさんのいいところを大きな声で、ほめて、ほめて、ほめまくりです。
でも、テキトーに持ち上げてるわけではなく、確かな根拠を持って、具体的に細かくほめた上で、改善すべき点はきっちり伝えています。ダメなことはダメって、ちゃんと子どもの目を見て言いますし。
いのりさん以外にも、例えば、元銀メダリストの息子・理鳳くんをコーチした時(原作3巻)、それまで常に偉大な父と比較されてきた中、司先生は "父との違い" を一瞬で見抜き、「飛び上がるとき空中でスッと姿勢を調整できる奇跡みたいなセンス……(以下略)」と具体的に細かくほめまくり。
最初はほめ言葉を素直に受け取れなかった理鳳くんも、次第に司先生に心を開いていきます。
このように根拠を持って具体的にほめるには、その子のことを、本当によーく観察して、小さな変化、ちょっとした進歩を見逃さないようにする必要があるんですね。司先生は、アイスダンスでの経験もあって、この観察力が非常に優れているようです。
そして、子どもの小さな変化を見逃さずに言葉にして伝えると、ほめるのと同時に、その子に対して「あなたのことを、ちゃんと見ていますよ」という安心感を与えるメッセージも送れます。
自己肯定感が大きくマイナスからスタートしたいのりさんも、「ほめ言葉+見守られる安心感」で勇気づけられ、実際の実力や実績もついてくると、次第に氷上で堂々と滑れるようになるだけでなく、明るくなって友達が増えたり、年上の子にも話しかけたりと、人と関わることにも積極的になっていきます。
<身近な実践ポイント>
例えば、漢字書き取りの宿題では「この字の、ここの部分が、バランスよく丁寧にかけているね」などと、超具体的に細かく "いい点" を拾って言葉にする
「以前よりも、〇〇ができるようになっているね」「〇〇に挑戦しただけでも、素晴らしいと思うよ」と、小さな進歩や変化、その子なりのがんばり・意欲にも注目
「メダリスト」は勝負事の世界の話なので、どうしても他人との比較や相対評価と切り離すことができず、作中でも一番頑張った人が報われるわけではない、と言及されていますが、家庭などでは「その子なり」の基準やがんばりでほめればOKです。
3. 具体的な動きを言葉とお手本で
いのりさんが初めてクラブの見学に来た日、「かかとの辺に体重を意識して、もう一度やってみよう」「足先をもっとピンと伸ばせる?」と、司先生の具体的な動き方のアドバイスをもらうと、その場ですぐにできてしまいました。
また、ある日の練習では、いのりさんが「恥ずかしくて滑れない」と落ち込むと、司先生は「じゃあ、俺と一緒に滑ろう!」と華麗なスケーティングを(かなり久しぶりに)みんなの前で披露。
「司先生みたいになりたい!」と、いのりさんの具体的なお手本になってくれました(原作1巻)。
このように、子どもに助言や指導をする時には、「もっとがんばろう」「ちゃんとやろう」などの曖昧な表現ではなく、「具体的な動き」を言葉にして教えてあげるのが、上達への近道です。
言葉で伝えるのが難しければ、実際に目の前でやってみせたり、文字通り "手取り足取り" 黒子のように動き方をレクチャーすることで、「どう動けばいいのか」イメージしやすくなります。
また、作中の練習でも度々行われていますが、スマホ・タブレットなどで動画を撮って観ることで、自分の動きを客観視して繰り返しチェックできるので、併用するのもいいと思います。
こうして、身近な大人がお手本となり、一緒にやって寄り添いながら、具体的な動きを教えてくれると、子どものできることはどんどん増えていくでしょう。
<身近な実践ポイント>
例えば、包丁の使い方を教える時は「見て。ここをこうして持って、人差し指をここにおいて、こうやって引きながら切ってごらん」など、動きをお手本と言葉で伝える
例えば、服のボタンがうまく止めれらない子には、後ろから手を添えて、「こっちの手はここを持って、こっちの手でここに通す」と、実際の動きを補助しながら一緒にやって見せる
■身近に理解し、支えてくれる大人がいれば……
「メダリスト」は、アニメの作画も本当にきれいだし、本物のスケート選手がCGのモーションキャプチャーを担当しているので、リンクでの動きも実際の試合のように美しいのですが、原作マンガは高い画力と緻密な書き込みで、更にそれぞれの表情が豊かに描写されています。
すると原作の1巻1話のいのりさんの不安で自信なさげな表情が、巻を追うごとに、目に力が宿って活き活きとして魅力的になっていく変化を、心身の成長と同時に見て取ることもできます。
今、学校などで、いのりさんと同じように、できないことが多くて自信をなくしている子も、身近な大人が理解し支え、意志を尊重され、自信をつけながら、できることを増やしていくと、きっといつか、その子の素晴らしい個性にスポットライトが当たる場所に出られると思いますよ。
いのりさんと司先生の二人三脚の成長物語は、多くの親子さんの励みになると思います(……ファンブック、私も買ってみようかな?)。
■この記事を書いた人の著書
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