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大学入学後の合理的配慮は話が早い

以前のブログ記事:【発達障害と大学受験-1】共通テストでの合理的配慮申請は、高1・高2から早めに動くべし! をベースに、LITALICO発達ナビでコラム記事を執筆しました。



共通テストでの配慮申請の高いハードルに加えて、専門医療機関の予約や受診が大変なこと、多くの高校では発達障害のある子への理解や支援体制がまだまだ十分ではないこと、生徒たちの間で発達障害をオープンにしづらい空気感があることなど、受験生の現実をどこかの偉い人にも分かってもらえるように書いたつもりです。


でも、共通テスト以外の大学独自の入試等では、そこまで配慮申請のハードルが高くない場合もあり、オープンキャンパス・入試説明会などでも、大学側が比較的気軽に入試での合理的配慮を相談できる体制を整えていることもあります。

ですので、配慮を受けての受験を希望する場合、気になる大学があれば、早めに事前相談してみるのがいいと思います(それで合否が左右されることはありませんから、大丈夫ですよ)。


■大学入学後の合理的配慮は話が早い(…と思う)


で、大学での発達障害のある子への合理的配慮やサポートは、「入るまで」は結構大変かもしれませんが、「入ってから」はかなり体制が整っている印象です。


以下はあくまで、うちの長男の経験だけを元にお話しますが、彼が生まれてから、幼稚園→公立小→私立中高一貫校→地方私立大学というルートを通ってきて、発達障害のある長男への理解や合理的配慮の実施は、大学が一番システム化されてて話が早かったです。


(長男が在籍する大学は、心理学部や教育学部もあるので、発達障害のある学生への支援や自前のアセスメントのノウハウが蓄積されてる面もありますが、長男が受験期に集めた各大学の入学案内や公式HPを見る限り、学生相談室等で、診断の有無に関わらず、発達障害傾向のある学生に手厚く対応している大学は多い印象がしました)


では、具体的に、長男の大学での合理的配慮は、どのような流れで実施されたかというと…。


1.事前相談


大学受験での挫折体験を強く引きずっていた長男は、入学後、本格的に講義が始まってからも、新しい環境に適応するのが困難で、授業中に急につらくなったり、様々な場面で負担を感じることが多くなりました(6年間のびのび過ごせた私立中高一貫校との環境の違いも大きいと思います)。


そこで長男は、自ら学生相談室保健室を頻繁に利用し、いろんな悩みを聞いてもらったり、クラス担当の先生や各授業の担当教員の先生にも、困ったことや分からないことを直接、あるいはメッセージやメールで度々相談していたようです。


(こういうことを長男が自分でできたのは、今までずっと私が彼の話を聞いたり、親子でたくさん雑談したり、小学校の頃からスクールカウンセラー等を彼自身が利用したり、困ったことがあれば高校の先生に気軽に相談に乗ってもらっていた経験などが、すごく活かされているように思います)


すると、話のやりとりの中で、保健室の先生から、「講義を受ける上での配慮や、出欠について考慮して欲しいことがあれば、これを書いてきてね」と、大学所定の形式の一枚の「配慮申請書」をもらってきました。


2.配慮申請書の記入


長男に「配慮申請書」を見せられた私は、それがたった一枚のA4用紙だったことに驚きましたが……(しかも、本人記入欄は上半分だけ)。更に、記入する内容もかなり簡潔なものでOKでした。


実物は流石にお見せできないのですが、大体のイメージは↓こんな感じです。


 

<配慮申請書>

〇〇大学学長殿

修学に際し、下記の配慮をご検討頂けますよう、医師の診断書を添えて提出いたします。

記入年月日:


所属:〇〇学部 〇〇学科  学籍番号:00000

氏名:〇〇〇〇  (他、個人情報記入欄)

診断書の有無:あり・なし・提出済(障害者手帳等のコピーも可)



希望配慮事項




ーーー以下、大学記入欄ーーー


 

共通テストの申請書等に比べて「え〜!これだけでいいんですか!?」って感じでしたが…😅(ちなみに、この大学は受験の際の配慮申請書も、これとほぼ同じ+高校での配慮記入欄だけです)


ただし、大学での合理的配慮の申請は、どの大学も学生本人が記入・申請することが基本となります。保護者等が手伝う場合も、本人の意思や希望を最優先できるよう、記入内容の説明や配慮の助言、代読・代筆など、あくまで後方支援に徹するように心がけるといいでしょう。


うちでも、長男が書けるところは自分で書いて、希望配慮事項の部分だけ、「自分の考えを文章で簡潔にまとめるのが難しい」と言うので、取材のインタビューをするように、彼の話を以下のような質問で聞き取りながら私がメモを取りました。


<合理的配慮の本人の希望を聞く質問の声かけ>


「特に負担に思っている授業は?」

「その中でも、どんなときが一番つらい?」

「つらく感じるシチュエーションやタイミングに、なにか共通項はある?」

「どうすればできた?/できそう?」

「例えば、こういう方法もあるけど、やってみたい?」

「それは、他の学生さんに何か聞かれる可能性もあるけど、別にイヤじゃない?」

「どの程度までなら、がんばれそう?」


…など。


その後、話の要点を箇条書きでまとめ、本人が最終チェックして修正。それを、記入欄に収まるように小さな文字で自筆するのが難しいので、私が代筆しました(うちは家で記入しましたが、学生相談室でも同じように配慮内容の相談や、申請書記入のサポートをして頂けると思います)。


長男の場合、具体的に以下の3つを「希望配慮事項」に記入しました(一部文言を変えています)。


<希望する配慮の長男の実例>

 

感覚過敏(聴覚、触覚)により、教室内の雑音や人との接触に負担・不安を感じるため

  1. 体調・気分不良などの症状が出た場合、教室外の廊下等に退避したい。その場合も出席扱いにしてほしい

  2. 座席指定のある講義は、教室の最後列など、出口に近い配置にしてほしい

  3. 雑音への負担感の強い時には、持参したイヤホンの着用を許可してほしい

 

これを保健室経由で提出すると、「実施の可否などを学部の先生方の会議等で検討するので、一週間程待って欲しい」とのことでした。


<聴覚過敏のある子のノイズキャンセリングイヤホンの使用>


聴覚過敏のある子のノイズキャンセリングイヤホンの合理的配慮例

ちなみに、3のイヤホンは、長男が使っているのは「ソニー(SONY) 完全ワイヤレスイヤホン WF-C700N」という製品。


スマホにBluetooth接続もできますが、ノイズキャンセリング機能を単独使用でき、教室のザワザワ音などの雑音・騒音だけ低減し、先生の講義の声や他の人の発言はしっかり聞こえるとのこと 。

家で長男が近くで動画見てる時も音モレなど全然してませんし、装着感も良いそうです。

長男はいつもペンケースに入れてます。


ノイキャンのイヤホンは、各メーカー1万円前後〜の高価で小さなものなので、うっかり屋さんには紛失時のダメージが大きそうですが、イヤーマフのように大きくないので目立たずに済み、一般の人も日常的によく使っているものなので、中高生くらいから、聴覚過敏のある子も自然な形で使用できると思います(高2次男も別のイヤホンを愛用)。


3.診断書と高校生以降の医療機関


大学側からは「(長男に発達障害があることは本人からの話で承知しているが、)一応お医者さんの診断書も添えて欲しい」とのことで、医師の診断書も頂いて、申請書と一緒に提出しました。


高校生以降の医療機関の受診については、発達ナビのコラムでも


"児童精神科や発達小児科の診療対象は15歳まで(初診時)のことも多く、初診の時点で15歳以上の子の場合は、主に成人向けの精神科や心療内科等での受診となります。"


…と触れましたが、現在18歳の長男は、高3の受験期にメンタル不調となってから、近隣の成人向けの心療内科で月1診てもらっています(初診予約時は、1ヶ月待ち程度でした)。


でも、ここのクリニックの先生は発達障害の専門医ではないので、基本的に発達障害の確定診断や各種検査などの実施はできないそう(実施機関と連携はしてくれます)。

ただし、長男は小1の頃、専門病院(児童精神科)でASDの診断が降りているので、「ASDによる感覚過敏があり、〜といった環境では、〜といった症状が生じやすい。よって、修学上適宜配慮が必要である」といった感じの内容の診断書を当日発行で出してもらえました(文書料は3〜4000円程度)。


ちなみに、小さな頃診断してもらった児童精神科のクリニックは、一年ほど定期的に受診した後、長男がほどほどに落ち着いたこともあって、ずーっと行ってませんでした(一時的なちょっとした不調程度なら、近所の小児科で漢方薬程度は処方してもらえました)。

この児童精神科は成人の相談にも乗っているので、一応15歳以降も受診可能なようですが、流石に空白期間が長くて、初診扱いになると完全予約制で半年以上は待つため、「今がしんどい」そうなので諦めました。


4.結果と合理的配慮の提供


結果、申請書&診断書を提出してから一週間ほどで、学内会議を経て、保健室の先生から口頭で長男の希望する配慮がほぼ認められたことが伝えられました。ただし、1.の「教室から退避した場合も出席扱いにして欲しい」という配慮に関しては、「授業時間内に教室に戻ってこれたら」という条件つき。


これらの許可された配慮は、学部内で共有され、事務や英会話の外国人講師の先生等にも自動的に伝わっていたようです。なので、授業中にしんどくなってしまう、という長男の負担感を様々な人に理解してもらえ、イヤホン使用等で負担感も軽減され、「しんどくなったら、教室を出ていい」と思うと気が楽になったようです(実際、何回かは出席扱いにしてもらいました)。


この配慮を継続して欲しい場合は、学期ごとに配慮申請書を提出する必要があるそうですが、診断書は一回だけでいいみたいです。


■合理的配慮では解決できないこと

このように、現在在籍している大学には本当に丁寧にご対応頂き、心底感謝しているのですが……。


長男にとって、受験勉強が不完全燃焼のまま、オープンキャンパス等にも一切参加せずに、バタバタと滑り込むように入学した大学は、どうにも「環境が根本的に合わない」とのことで、どうしても前向きに通えないようです(先生も学生さんも、みんな優しくていい人たちなのですが…)。


こちら側も、新しい環境に適応できるように手を尽くして、できる限りの努力はしてみたものの、気持ちの問題や、環境自体が合わないことだけは、合理的配慮では解決できず、また、長男の大学受験に対する強い後悔も残っていたため、親子で再三話し合った末(バトル含め)、長男はこの秋から休学して、本命校の再受験に挑戦することになりました。


ワタシもそろそろ白髪染めに挑戦しようかな……。


記事協力/長男

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