Q:発達障害のある子は私立中学にいますか?
人によっては「何を当たり前のことを…」と思われるかもしれませんが、これは、5-6年前の長男の中学受験当時、実は私が非常に知りたかったことなのです。
当時は発達障害のある子の中学受験についての情報が本当に少なく、私はネットで検索結果の最終ページの隅々まで目を通していました。
…すると、有益で前向きな情報はごく僅かで、「そういう子は受験しないで」等の心ない書き込みや、不当な扱いを受けた事例など、非常に厳しい情報ばかりが目についてしまい、「そもそも受験していいのだろうか」「果たして、私立中学に通う凸凹さんはいるのだろうか」…と、今にして思えば杞憂に過ぎないことを、とても気にしていました。
ですから(現在はもっとマシな情報もかなり増えているとは思いますが)、もし、当時の私達と同じようなことで不安を感じている親子さんがいるならば、この際、私がハッキリお答えします。
A:いますよ、フツーに。
だから、中学受験を考えている凸凹親子さんは、誰に遠慮せずとも、安心して受験して下さいね。
このことを、さり気なーく広く世間一般に周知したい、という想いもあって、先日、LITALICO発達ナビで…
…というコラム記事を執筆しました。
発達障害のある・なしに限らず、中学受験を考えている親子さんの「私立中高一貫校ってどんなところ?」という疑問に対し、うちの長男・次男が通う学校を例に、私立中高一貫校の一日の流れや、先生方の印象や授業内容、注意点、6年間の一貫教育などの実際を、可能な範囲で紹介しています(私達自身、入学前には分からないことも多かったので、当時はこういう情報を知りたかったのです)
この記事の中で、「※A中学は発達障害・不登校傾向のある子のいわゆる「積極受け入れ校」等ではありません。」と、筆者注釈を加えた部分があります(記事中、うちの子達が通う私立中高一貫校を、「A中学」と表記しています)。
この意図について、注釈では書ききれなかった部分を、このブログでも以下に補足させて頂きますね。
うちの子達が通うA中学は自由な校風の、地方の私立中高一貫校です。いわゆる超難関校・超進学校や、知名度の高い有名校というわけでもなく、まあ、フツーの私立だと思います。
ですから(一般的には当然のことながら)、うちの子達は「発達障害だから」という理由で受験し入学できたのではなく、この学校も特段そういう子達を集めている学校というわけではありません。
でも、他の子達と同じように入試に合格さえすれば、発達障害・グレーゾーンと思われる子は、うちの子含め、クラスにある程度、フツーに在籍しています(この点、長男の受験当時、私は志望校には聞きづらくて、とても不安になっていました)。
おそらく、学校の難易度に関わらず、どこの私立中学にも、一定の割合で凸凹さんはフツーにいると思います(超難関校はその割合が高めかも、という噂ですが…)。
ただし、私立の場合は「合理的配慮」は努力義務の範囲となりますし(※ 2024.4より、私立学校でも法的義務)、A中学側は発達障害対応を心得ているわけでもなく、入試や入学後に特別な配慮はありません(うちも特にお願いしていません)。
でも、環境がその子に合ってさえいれば、うちの子達の場合は特に問題なく、のびのび過ごせています。(当然、私立中学では、通級のような療育・発達支援や、支援級の生活単元のような特別支援教育は受けられないので、SSTや自立に向けたライフスキル・トレーニングなどは、自宅で継続する必要があります)
ただし、発達障害の程度が強い子や二次障害のある子には、ただでさえ小学生には大変な中学受験勉強や、入学後の早い学習進度等の負担が大き過ぎるように思うので、そういった場合は、私立中学進学を希望するならば、発達障害対応が可能な、いわゆる「積極受け入れ校」を探す、という選択肢もあります。
先述の通り、5-6年前の当時は、発達障害のある子の中学受験に関する情報が非常に少なかったので、私は手当り次第に情報収集し、とにかく少しでも気になった学校に資料請求等をしまくりました(中高一貫でない私立中学も含む)。
そうして知った範囲では、数は多くないものの、HP等で受け入れを明言していたり、募集要項に「年間の欠席日数が○日”以上”」と不登校を入学条件としていたり、専門知識のある教員やカウンセラーの配置、個別最適化された学習環境などで、私立中学の中にも、発達障害対応の十分な体制を整えている学校もありましたよ。
中には、早起きや満員電車が苦手な子に配慮して、授業開始時刻が一般の学校よりかなり遅く設定されてたり、保護者の方が手弁当で学校運営を手伝っていたり…と、かなりユニークでアットホームな学校もありました。(通信制やフリースクール、私設学校等含め、現在はもう少し、中学進学時点での選択肢が増えているかもしれません)。
また、一般的な私立中高一貫校でも、1科目・2科目・選択科目入試など、小学生の受験勉強の負担が少ない入試方式を採用している学校も昨今かなり増えているようですし、総合型選抜(いわゆるA.O.入試)等の実施で「一芸に秀でた子」「一つのことに熱中できる子」「特定分野に特化した子」「学力だけでは評価できない個性的な子」等を歓迎している学校も多くあります。 それと、記事中では「自由な校風の学校の注意点」として、基本、こういった学校は「来るもの拒まず、去るもの追わず」のドライな姿勢なので、個別の配慮やケアが必要なお子さんは事前によく確認を…的なことを書きましたが…。
その一方で、発達障害・不登校の子の受け入れや対応の可否を、公式HPや学校案内等で明言していなくても、教員教育がしっかりしてて、ある程度の発達障害対応・ちょっとした配慮ができる学校や、入試等で合理的配慮の実績がある学校、少人数制で一人ひとり丁寧に手厚く対応している「面倒見のいい学校」等も、情報を細かく調べたり、志望校の個別相談会や、在校生の保護者や塾などの地域の受験事情に詳しい方に直接聞いたりすると、教えてくれる場合もあるでしょう。
だから、これから中学受験に挑戦する凸凹親子さんは、「胸張って、正面突破!!」で応援しています。
(※ 私立学校での合理的配慮について)
2024.4.1より、改正障害者差別解消法が施行され、私立学校においても合理的配慮の提供は努力義務から法的義務へと変わります。(参考:内閣府|障害者差別解消法に基づく基本方針の改定)
これにより、私立中学で書字等に困難さのあるお子さんが、どの程度からどのように対応して頂けるのかまでは現時点ではわかりませんが、もし、LDなどの診断があり、字を書くことに大きな支障・困難さがあるお子さんが中学受験を予定している場合には、事前に受験校の説明会や相談会などで、受験時や入学後の学習について、早めに(できれば4-5年生のうちから)合理的配慮の相談などをされるといいでしょう。