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執筆者の写真楽々かあさん(大場美鈴)🇯🇵

「みんなと同じ中学」以外の学びの選択肢

更新日:10月15日

理由は問わず、とにかく「みんなと同じ、地元の公立中学には行きたくない」という親子さんのために、以前私が収集した学びの選択肢の情報をまとめておきますね。


うちでは長男が5年生の頃より、公立小学校卒業後の進路を親子で考え始めました。

ところが当時、小学校では通常学級と支援学級の間で揺れ動くタイプの長男は、知的な好奇心や学びへの意欲も強かったのですが、うちの地域の場合は…

「学区の公立中学の通常学級では、様々な面でハードルが高い」

「でも、学区の支援級は、学習内容も内申書も高校受験を前提にしていない」

「特別支援学校は入学条件が合わない」


…という八方塞がりの状況。

そんな実情から、うちの地域では普通高校進学を希望するなら、発達障害のある子でも中学では通常学級に在籍せざるを得なかったのですが…


「みんなと同じ中学に行くなら、おれは不登校する!」と長男は断固宣言。


「詰んだ!」…と、正直、その時の私は思いました。


…というのも、高校進学では、全日制普通高校以外にも、定時制・単位制高校、専門(職業)高校、通信制高校・サポート校、高卒認定試験等々、多様な選択肢があるのですが、中学進学時点での学びの選択肢はかなり限られているように思えたからです。

でも、柔軟に視野を広げると「地元の中学」以外の学びの選択肢は結構あることに気づきました。

長男の場合、最終的には私立中高一貫校の受験という選択に至りましたが、それまでに「ありとあらゆる進路の可能性」を親子で模索しました。


「みんなと同じ中学」以外の学びの選択肢


以下は、うちで当時多少なりとも検討した、小学校卒業後の学びの場です。他にもあるかもですが…。

まず、学びの場の選択肢には大別すると、<一条校>と<オルタナティブスクール>があります。

<一条校>とは…

日本の教育基本法で定められた範囲で運営される、正式な「学校」として認められているもの。中学の教育課程は学習指導要領に基づいて行われる(教科書も検定教科書を使用)。"学区の公立中"以外の例としては…


法的には正式な”学校”と呼べないものの、フリースクールやホームスクール、「もう一つの学校」と呼ばれる独自の理念や教育方針で行われる教育の場などの総称。基本的に生徒の在籍は学区の公立中学の扱いとなり、在籍校や教育委員会等から保護者に説明を求められたり、出席の扱いについて話し合いが必要になる場合もある。例としては…

 

1条校編


【Route.1】私立中高一貫校

情報も多いため、割愛。(関連Blog「発達障害のある子は私立中学にいますか?」


【Route.2】私立中学(中学のみ)

「中学のみの私立中学」や、「小中一貫型で中学からの募集もある私立中学」という選択肢。

数は多くないものの、中高一貫校以上に個性的でユニークな校風の学校も。インクルーシブ教育を積極的に推進していたり、発達障害や不登校に対して十分な理解や支援体制がある学校も。


高校進学を希望する場合は中3で再度受験の必要がありますが、行きたい高校がある場合などは、中学時代の学びの場として向くように思います。また、高校進学時に、提携校・連携校などへの推薦枠があることも。

入試方式は、2科目+面接や、選択科目入試、推薦・AO型入試など、多様な入試方式を採用している学校も。また、学力試験よりも、事前の説明会や体験授業などへの参加や、学校の方針等を親子で十分理解した上での事前面談・面接試験を重視して入学者を選ぶ学校もあるようです。


<うちの検討例:私立B中>

不登校の子どもに理解があり、一人一人に合わせた少人数で手厚い指導が魅力。SSTの授業やカウンセラーの常駐なども。先生方も面倒見が良く、発達障害に対する知識・経験も豊富。


【Route.3】公立中高一貫・国公立大学附属校 ※学費無償

充実した環境でハイレベルな公教育が学費無償で受けられるため(高校課程からは、公立・私立共に高等学校等就学支援金制度が適用)高倍率の人気校が多い公立中高一貫校・国公立大学附属校。

自治体や大学の教育研究機関という色合いが強く、特別支援教育やインクルーシブ教育を推進政策・研究対象にしている場合、発達障害の生徒にも理解があり、通常の教室での支援体制も確立され、先生方の知識・ノウハウが豊富なことも(知的障害対象の特別支援学級がある国立大学附属校も、現在全国で6校あります。~文部科学省H29年度資料より)

入学者の選抜は「受検」と呼ばれ、概ね「適性検査・面接・作文」などと、小学校の担任が作成する「調査報告書」などを元に、それぞれの学校の基準で選考が行われます。

適性検査の内容は、教科横断型の総合的な問題を記述式で解答するなど独自性が高く、面接も集団面接やグループ活動の行動観察などの学校もあり、発達障害傾向のある子にはハードルが高めの印象もしますが、合格者は必ずしも適性検査や面接での点数順とも限らないようです。

また、入学者の多様性を確保するために、「特別枠」「帰国生枠」「その自治体の住民枠」などが設けられている学校や、抽選で受検生や最終合格者を決定することも。


国公立の学校は、障害者差別解消法の「合理的配慮」の提供が法的義務となるため(※1)、受検や入学後に、発達障害があって読み書きや集中力に困難さのある子などに対応していただける場合が多く、配慮を希望する場合には、早めに相談・申請することが大事だと思います。


<うちの検討例:C大附属中>

自由な校風の国公立大学の附属校。少人数で大学と連携した特色ある教育が公教育で受けられるため、大変人気があり倍率は高い。障害のある生徒の受け入れや入試での合理的配慮の実績もあり、バリアフリー設備や相談室等も充実している。


【Route.4】別の公立中学 ※学費無償

公立校に限られますが、子どもに受験勉強の負担をかけることもなく、確実に希望の学校に入学・転入できる方法は、ズバリ「その学区に引っ越す」ことです(特別な事情がある場合、現住所のまま、学校や教育委員会等との話し合いで、自治体内の他の学区等への入学・転入が認められることも)。


現在、発達障害のある子への理解や支援体制は、学校ごと地域ごとで大きな格差があると思いますが、逆に言えば、自治体によっては非常に充実している場合も。


学校選択制などを採用している自治体や、越境入学を認めている学校でなければ、引越しの負担が家族全員にかかってしまうため、うちでは難しい選択肢でしたが、調べてみると、本当に支援体制が充実している地域・学校はあるものです(特別支援教育「モデル校」「指定校」などになっている学校も)。


その自治体が教育・福祉・子育て政策等に重点を置いている場合、公立校全てでユニバーサルデザイン化やICTの導入が進んでいたり、充分な通級指導教室の設置や、通常の教室の中での加配教員の手厚い配置、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどの人材が十分確保されていることも。中には、全市を挙げて特別支援教育・発達障害対応に取り組んでいる自治体も。

ただし、支援級のママさん達などの間で評判の近隣の公立中学でも、1人の先生の個人的な熱意で支えられている場合、その先生が人事異動になった途端に状況が変わってしまうことも。「地域・学校ぐるみで、継続的な支援体制があるか」は、事前によく確認しておく必要があるでしょう。

<うちの検討例:D市立(全)中学>

近隣自治体のD市は子育て・教育政策に重点を置き、発達障害への理解・支援体制も進んでいると評判。市内の全中学で通常の教室でもユニバーサルデザインを取り入れ、加配教員の配置も手厚いそう。また、コロナ前より全生徒にiPadを配布し、電子黒板なども整備され、ICT化も進んでいる。


【Route.5】教育支援センター(旧・適応指導教室) ※学費無償

不登校傾向にあるお子さんなどのセーフティネットとして覚えておきたいのが、自治体の教育支援センター(旧・適応指導教室)という存在です。


教育支援センターは、主に、その地域の不登校傾向の小・中学生を対象とした「学校への復帰」を前提とする公的な教育機関(※2)です。公教育の中で運営されているため、授業料は無償。

また、公立中に毎日フルタイムで通えない場合も、「週に何日か支援センターに通う」「午前中だけ支援センターで過ごす」など、在籍中学との併用や部分的な利用もできます。


異年齢の子ども達が一緒に少人数の環境で学ぶ「公営フリースクール」といった印象ですが、個別の学習支援を受けながら、教科書中心に各自のペースで学習を進め、時々、遠足などのイベントや、調理実習・芸術活動・簡単なレクリエーションを含むスポーツなども行われているようです。

常勤・非常勤の先生が勤務し、退職後の先生が指導することも。また、スクールカウンセラーなどの定期・不定期での配置や、学生や一般のボランティア等が子ども達と関わることも。


在籍は学区の公立中になり、通級すると在籍中学での出席日数にカウントされ、中学校・教育委員会とも連携して情報共有が行われます。


<うちの検討例:E市教育支援センター>

E市が運営する市内の不登校傾向の小・中学生のための教育支援センター。異年齢・少人数でアットホームな雰囲気。中学受験は中高一貫の本命一校しか受けなかった長男の「第2志望」でした。


小学校の特別支援コーディネーターの先生の話では、長男のようなタイプもいつでも受け入れるので、希望があれば「まずはどんな場所・雰囲気か、実際に体験授業を受けてください」とのこと。

その上で、正式に「中学からココに通う」と決めた場合、直接申し込むのではなく、学区の小中学校の特別支援コーディネーターの先生等を通しての手続きが必要だそう。

また、私立中学等からの不登校生の受け入れも行っているので、万が一、何らかの理由で長男が私立中に途中から通えなくなった場合も「ここを頼ればいい」と安心できました。



 

オルタナティブスクール編


【Route.6】もう一つの学校

主に欧米の哲学的思想を基に、独自の理念や教育方針で運営されているもの。モンテッソーリ、シュタイナー、イエナプラン、サドベリー・バレー…などの教育法を各校で取り入れ、生徒の自主性を重んじたり、カリキュラムの自由度が高い独自の教育を行う。

生徒の個性を尊重し、話し合いや体験的な学びを重視し、少人数教育である場合が多い。

ただし、学費が高い場合が多く、また、高校を併設しているところは少ないため、日本の高校に進学する場合は学習面や生活面でのギャップが大きいことも。

<うちの検討例:F学園>

北欧式の教育を行う教育施設。教科書のない独自の教育カリキュラムが魅力的。日本の教育とは違うものの、学習内容は高度。また、親が積極的に学校運営に参加し、イベントなどを行う。

【Route.7】インターナショナル・スクール/各種学校

インターナショナル・スクールは、専門学校や芸能学校、自動車教習所などと同じ「各種学校」として認可されているものと、無認可のものがあります。学費は高額。

認可校であっても一条校ではなく、在籍は学区の公立中に。ある程度日本人を受け入れるところと、外国籍のみの場合もあります。授業の全てが英語で行われることが多く、高校卒業時に国際バカロレア(IB)や高卒資格が取れ、海外の大学だけでなく、日本の大学の受験資格を得られる場合もある。

(うちの通学可能な範囲に、インターナショナルスクールはありませんでした)


【Route.8】フリースクール

フリースクールは、個人やNPO法人、教育系の企業などが運営する、不登校など何らかの理由で学校に通えない児童・生徒の居場所となる民間の教育機関。

在籍は公立中となり、在籍校と連携して出席扱いになることも。かかる費用は様々で、入学資格を設けていないことがほとんどですが、受け入れ年齢に制限がある場合も。

LDのある子を始め、発達障害のある子に対応した学習や、少人数・個別最適化された学習などで、その子に合った学びを得られる場合も。


また、近年では、通信制高校やサポート校が併設している中学生対象のフリースクールもあり、中学卒業後は、そのまま、そこの通信制高校にスムーズに入学できることも(角川ドワンゴ学園運営のN中等部なども通信制のフリースクール扱いのようです)。

<うちの検討例:G学園>

学習系企業運営のフリースクール。週5日通学から在宅学習(先生の訪問サポートあり)までコースが選べる。高校は通信制。


<うちの検討例:Hさんのおうち> 近隣の子ども達の居場所的な、個人運営のアットホームなフリースクール。遠足などの体験プログラムもある。いつでも自由参加なので一時利用も可能。


【Route.9】ホームスクール

慣れ親しんだ自分の家を拠点に、安心して自分のペースで学習できる。学習内容は、学校の教科書などに沿ったもの、その子の個性や理解度・興味関心に合わせたもの、独自の英才・ギフテッド教育など、各家庭の方針で自由に決められる。親や家族の理解とサポートが不可欠だが、教育支援センターやフリースクール、通信教育やオンライン学習、塾や家庭教師などとの併用もできる。


<うちの検討例:おうち学校>

長男が中学受験で不合格だった場合の、最終的な受け皿。本人の興味関心に合わせた探求学習と一般的な通信教育を併用し、母が学習アドバイザーとなり、時々は父の職場でも受け入れ可能。また、日中の居場所(&親の息抜き)として、時々自治体の教育支援センターも併用予定…の心づもりでした。

 

学区の公立中学じゃなくても、学びの選択肢は沢山ある…!

この記事は、あくまで、5−6年前に、当時私が調べた範囲の情報を基に記事を作成していますので、現在の状況や個別の学校等の事例は、ご自身で確認頂ければと思います(コロナを機に、教育の場でもいろんな状況が変わってきましたしね)。


たとえ「みんなと同じ中学」に通うことに不安があっても、途中で行けなくなっても、親子で思いつめないためにも、「学びの場の選択肢って、実はこんなにあるんだよ」って、頭の片隅で知っておいてソンはありませんから…。


 

(※1)2024.4.1より、改正障害者差別解消法が施行され、私立学校においても合理的配慮の提供は努力義務から法的義務へと変わります。(参考:内閣府|障害者差別解消法に基づく基本方針の改定


これにより、私立学校でどの程度からどのように対応して頂けるのかまでは現時点ではわかりませんが、もし、発達障害などの診断があり、受験や入学後に合理的配慮を希望する場合には、事前に受験校の説明会や相談会などで、早めに(できれば4-5年生のうちから)相談などをされるといいでしょう。


(※2)

「学校復帰」を前提とした従来の公教育の在り方については、現在様々な議論が行われており、公的教育機関である教育支援センターの役割についても、今後、見直しが進む可能性もありますが、現時点では、大半の支援センターが「学校復帰」を前提として運営されているようです。




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