最初にちょっとだけお知らせを…
日本科学未来館(東京・お台場)の展示企画、「コトバにならないプロのワザ~生成AIに再現できる?」に詩人・谷川俊太郎さん、お笑いコンビのスピードワゴン・小沢一敬さんと共に、言葉のプロとして私も参加させて頂きました。
9.13~11.13 3階 総合案内前スペース 入場無料
展示動画(フルバージョン ※大場は7:01より)(日本科学未来館公式YouTube)
子どもに「学校行きたくない」って言われたときの声かけを、話題のChatGPT相手に四苦八苦しながら生成する試みをしています。
科学館や博物館って、不登校のお子さんの日中の居場所にもなっているそうです(私の展示は入場無料スペースなので、よければゆっくりしていってくださいね)。
そこで、少々懐かしく思い出したのが、5年前の小5の次男との不登校時間のこと。
■感覚過敏のあるグレーゾーン次男の不登校
発達障害グレーゾーンで感覚過敏がある心優しい次男は、私が長男の中学受験にかかりきりになっていた小4の間に、学級崩壊状態だった教室環境や思春期前の周りの子達の変化などに不安やストレスを溜め込んでいたにも関わらず、「かあちゃんが大変そうだから」と、ずっと親に言えずにいました。
そして、翌年度の5年生に進級した途端、登校する5分前になるとお腹が痛くなってトイレから出られずに欠席することが続くように……。
ただし、次男の5年生の担任は、学校に負担を感じやすい子達にも理解があり、柔軟な考え方の頼もしい先生で、クラスも落ち着いたにも関わらず…です。
実は、いつも他人を気遣って自己主張するのが苦手な次男は、本当にしんどい時には感情を封印して耐え、ようやく私の手が空き、信頼できる担任の先生になり、危機的状況が去ってから、体調不良という形でSOSを出したのだと思っています(感情にはタイムラグがあって、後から遅れてやってくることもあるようです。特に言葉を飲み込みがちな子は…)。
つまり、公私共に、安心して不登校できる環境になったんですね。まあ、私に余裕ができるのを待ってくれてたのでしょう(ちなみに、私自身の不登校時も、担任は優しくて柔軟な先生でした)。
次男自身は「学校に(行けるものなら)行きたい」とは言っていたので、保健室登校や、遅刻や早退などで行ける時には送り迎えをし、無理な時は家でゆっくり休ませていました。
そうやって体調が徐々に回復してきたら、宿題などをしつつも、時々家でヒマそーにしている姿も。
そこで、長男の受験で後回しにしてしまった埋め合わせも兼ねて、せっかくなので、次男との、この不登校時間を有意義に過ごしたいなと思い立ち、「家で理科の実験教室でもやってみる?」と聞くと次男の目がキラッと光りました。
次男は小さな頃からロボットなどが大好きで、理系の研究者であるパパの影響もあって科学館などにもよく連れて行きました。また、マンガの「ドラえもん」や「名探偵コナン」などを愛読するうちに科学や雑学的知識も豊富。なので「おうち実験教室」の提案は、次男のハートにクリーンヒット!
うちで取り組んだ実験の全ては紹介しきれませんが、「うちでもやってみようかな」と思った親子さんに、おうちでの実験教室の進め方などをご参考までにお伝えしますね。
■不登校時間の過ごし方「おうち実験教室」〜体感型学習<理科編>
<社会編>同様、体感型の学習は学校の一律の学び方に合わない子でも、やる気と興味を引き出すことができます。また、ちょっとした実験ならおうちで手軽にできるので、不登校中でなくても、小学校の理科実験では班行動の蚊帳の外に置かれがちな長男や、文字を読むのがやや苦手な長女の学習理解を助け、中学受験勉強のフォローにもなりましたよ。
【おうち実験教室】
時間がたくさんあった次男とは、おうちでできる手軽な実験を片っ端からやっていきました。マンガ「Dr.STONE」に出てくる”原始コーラ”の再現をしたり、「空想科学読本」などに書いてあることの検証をしたりも。
実験場所はキッチンがほとんど。色変わり焼きそばやカルメ焼きを作ったり、炎色反応や水溶液の性質調べの実験したりも、キッチンだと使える材料もいろいろあるし、換気もできるし、片付けもラクです。
生物系は、スマホと連携できる顕微鏡でいろんなものを拡大して写真撮ったり、近所のスーパーで買ってきた魚や、売れ残りの花を解剖して観察したりとか…。
実験の材料は大抵は百均やスーパーで手に入るものがほとんどですが、実験器具(フラスコやバネ秤、リトマス紙など)は、Amazonぽちで取り寄せました。自由研究向けの実験キットなども、時期を問わず便利ですね。
私自身は理科系科目には強くないので、常に"参考書"を片手に、子どもと試行錯誤で実験、実験でした。当時、特に参考にした本を紹介します。
<うちのオススメ☆おうち実験教室の参考書籍>
「小学館の図鑑NEO 科学の実験」小学館
おうち&身近な材料で手軽にできる実験・科学工作を網羅。これ一冊制覇すれば理科博士になれます。
「21世紀子ども百科 科学館」小学館
子どもの「なぜ?」「〇〇って何?」という身近な疑問に答える図鑑。ちょっとした実験・工作も。同シリーズの「もののはじまり館」「歴史館」も良かったです。
「ドラえもん ふしぎのサイエンス」(シリーズ)小学館
簡単に科学工作ができる付録つきムック本。おなじみのキャラ達のマンガを交えた解説など本誌も楽しい。
「Dr.STONEの最強自由研究」(集英社ムック)集英社
マンガ「Dr.STONE」の科学現象を再現する手軽な実験をキャラやマンガのシーンを入れつつ紹介。
「世界一おいしい火山の本」林信太郎・著、小峰書店
地震や火山などの地学系の実験を、キッチンでスイーツ作りながらできてしまう貴重で画期的な本。
「子供の科学」(月刊)誠文堂新光社
最新の科学ニュースやトピックの解説、実験・電子工作・プログラミング・サバイバル術など盛り沢山の月刊誌。時々付録も。中学受験生は定期購読推奨。
【科学工作・電子工作】
科学工作や電子工作などは、予め材料・道具を揃えてまとめておいたり、キットなどを買い置きしておくと、お留守番の時のヒマつぶしなどにもなるので不登校時間にもオススメ(ただし、ハンダ付けなどは親がいる時に)。
うちでは、お風呂で牛乳パックのポンポン船を浮かべたり、廊下で風船ホバークラフトを走らせたり、よく飛ぶ紙飛行機の折り方を研究したり、ラジオやスピーカーの電子工作したり……。
お腹痛いのも忘れて、夢中になってました。
大学の実験教室に兄弟妹で参加したり、ある程度回復してからはロボット教室に通い始めたりも。
また、マジメな次男は欠席の時の外出はしたがらなかったのですが、長男・長女とは近所の公園にペットボトルをメントスコーラで飛ばしに行ったり、動植物の野外観察スケッチなどもしました。
少々手先が不器用でも、その子が夢中になれることならがんばれるので、いろんな素材に触れながら手作業する科学実験や工作は、自然な形の作業療法・感覚統合の療育あそびにもなります。
■中学受験も意識しつつ、実験経験を発展させるには…
5年の時点では、次男は中学受験すると決めてなかったのですが、私立中学に通い始めた"あの”兄に入学後すぐに友達ができたことなどで興味を惹かれ、秋の文化祭に行ってみると公立小との環境や空気感の違いを肌で感じたりもしていました。
また、現実的な話、次男の腹痛(過敏性腸症候群、IBS)が改善しなかった場合、地元の公立中に進学すると、たとえ定期テストができても、欠席や遅刻が多いと内申点が取れないので、公立高校の受験や私立高校の推薦入試に不利になり、高校の選択肢がかなり限られてしまいます。
うちは地方在住なので、地元の人達には、県立高校>私立高校みたいな意識が根強くありますが、高校受験や内申点のプレッシャーが少ない安定した環境で、のびのびと6年間過ごせる私立中高一貫校は、次男の心身の健康のためにも悪くない選択肢のように思えました(親の教育費の負担を除けば…)。
そこで、次男がいつ「私立に行きたい」と言い出しても対応できるよう、得意分野だけでも中学受験の下地作りはできる範囲でしておくことに(案の定、6年生になってから「お兄ちゃんと同じ学校行きたい」と言い始めました)。
…とは言え、先述の通り私は理系科目苦手なので、実験後の、子どもの「なぜ、どうして」に対して、私がいい加減な知識で答えるわけにもいかないので、本に加えて、YouTubeなどでの動画学習も活用しました。
【動画学習】
やはり、実験は動きや手順など動画が分かりやすい上、自宅ではできなかった少々危険な実験や特殊な素材を使った実験などを公開している方もいます。
そして、「なぜそうなるのか」「どういう仕組みなのか」を、正しい知識を元に、わかりやすく丁寧に解説してくれる中学受験塾の先生などが配信しているチャンネルも沢山あります。
<うちのオススメ☆実験系YouTubeチャンネル>
理科実験教室サイエンス・ラボの倉橋修先生のyoutubeチャンネル。
中学受験も踏まえた知識と丁寧で分かりやすい解説の倉橋修先生(←イケボ)の動画には、3兄妹で大変お世話になりました。受験頻出の問題の実験動画を交えた解説や、うちの子の苦手な天体などの難単元の要点を整理した覚え方、受験以外の子どもの興味を引く雑学・豆知識など、内容も充実。
ご著書の「小学6年分の理科が面白いほど解ける65のルール」(明日香出版社)も理解のポイントがわかりやすく、ふせんだらけにして使い倒し、次男の中学受験理科の勉強はコレ一冊で大丈夫でした。
理科実験をエンタメショーにまで進化させた風雲児、テレビでもおなじみの米村でんじろう先生&サイエンスプロダクションの仲間たちのチャンネル。とにかく理科実験は楽しいってことが伝わってきます(少年の瞳をして無邪気にはしゃぐ、いい大人達の姿も見られます)。
特に科学工作・物理系が好きな子にはオススメ。「なぜそうなるのか」身近なものの仕組みの解説動画などもあるので、理科に興味をもつきっかけにも。
サイエンスアーティスト・市岡元気先生(元気ラボ)のチャンネル。長女のコロナ休校中には、イケメン元気スマイルに私も一緒に癒やされてました。ゲームやアニメに出てくるシーンや武器(日輪刀とか)を科学で再現したり、有名YouTuberとコラボしたあそび心いっぱいの実験など、子どものハートを掴むツボを心得てらっしゃって、動画自体もハイクオリティで解説も分かりやすいです。
また、学校の理科の教科書では興味が持てない中高生には、Dr.STONEの科学監修などもしている、マッドサイエンティストを自称する、Dr.くられ先生のチャンネル(科学はすべてを解決する! [くられ with 薬理凶室])の教科書さんシリーズなどもオススメ。
私が今回企画でご縁があった日本科学未来館さんの公式チャンネル(MiraikanChannel)も、科学ニュースやトピック、ノーベル賞など、中学受験でよく出る時事ワードの解説などもしているので、おうち中学受験生の参考にもなるかも。
実際に体感しながら実験した経験を、動画の解説などで「なぜ、そうなるのか」理解していると、その後の中学受験用のワークや過去問などへの取り組みも、知識と経験を紐づけながらできるので、次男は短期間の学習でも理科系の内容の入りが良かったと思います。
■次男との不登校時間を今振り返ると…
もちろん、子どもがずっと家にいると私も本当に本当に大変でしたし、私自身もスクールカウンセラーを頼ったり、内科で疲労回復や心が落ち着く漢方薬などを処方してもらったりもしたので……お子さんの状態や環境によっては、もっと深刻な状況もあると思うので、どなたにでも「不登校時間を楽しく有意義に」とはオススメできませんが……。
でも、実験に限らず、沢山宙ぶらりんな時間がある時にしか、できないことってあるんじゃないかと思っています。
科学実験や工作に夢中になっている時は、いつもは内気で大人しい次男が、目をキラキラさせて無邪気にはしゃぐ、子どもらしい姿を見せてくれるのが嬉しかったっけ。
その後、次男は6年生で小学校に完全復帰し、兄と同じ私立中高一貫校に無事進学。今では母のつむじを上から見下ろす、無愛想な仏像系高校生男子(帰宅部)にすくすく成長しました。
親子で一緒に過ごす時間もすっかり減った彼との、この不登校の時の密な時間は、今にして思えば貴重な経験で私にとっても大事な思い出でもあります。
今のところ、次男は理工系学部への大学進学を考え始めたようです。