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「普通の高校」以外の、中学卒業後の多様な学びの選択肢14

中学卒業後、全日制高校の普通科以外にも多様な学びの選択肢が…


昨今、中学卒業後の学びの選択肢には、実に多種多様なルートがあります。

発達障害・不登校や、家庭事情等の有無に関わらず、柔軟に主体的に「普通の高校」以外の選択をする子も意外といるのかもしれませんね。


前回のブログ記事「【考察】「かがみの孤城」で見る、公立・私立中比較考と不登校の中学生達のその後」で、スバルくんのケースについて調べた時に、私自身「へえ〜、今はこんなにいろいろ、中学卒業後の選択肢があるんだあ!」と驚いたので、もう少し詳しく、多様な学びの選択肢について、まとめてご紹介したいと思います。


まず、ここでいう「普通の高校」とは…


  • 学校教育法で定められた「高等学校」で、いわゆる「一条校」

  • かつ、朝登校し、毎日6時間程度の授業を受ける「全日制」で、学年ごとに必要な単位数と履修する授業が決まっている「学年制」

  • かつ、学習指導要領に沿って、国・数・理・地歴・公・外・保体・芸・家・情などを満遍なく学ぶ「普通教育」を実施する教育カリキュラムの「普通科」。(ただし、普通科でも文理選択や希望進路に合わせたコース選択なども)


…という「全日制高校の普通科」を指すこと、とします。

ちなみに、全日制高校に通う生徒数は高校生全体の9割、普通科在籍の生徒数は7割程。


では、「普通の高校」以外の、中学卒業後の多様な学びの選択肢には、どんなものがあるのでしょう。

目次も兼ねて、以下に一覧リストにすると…


<目次>



…などなど、本当に多様な選択肢が、いーっぱいあります!

(「単位制の通信制高校の専門学科」のように複数が重複することも)


「普通の高校」以外の、中学卒業後の多様な学びの選択肢14

では、それぞれの選択肢を更に細かく分けて、個別に詳しく紹介していきますね。

(かなり網羅したのでハイボリュームに…😅 <目次>から、気になるとこだけお読み下さい)



<「普通教育」以外の教育カリキュラムが学べる高等学校>


まず、公立・私立や高校の種類を問わず、高校に設置できる学科は「普通科」「専門学科」「総合学科の3つがあり、学校全体で専門性の高い教育を中心に行う専門高校も。

そのうち、普通科以外の選択肢としては…


1【専門学科がある高校】


専門学科を設置している高校はかなり多く、うちの県内でも公立私立合わせて100校近くも。うちの子達が通う私立中高一貫校も、高等部からの入学者(いわゆる外進生)には、普通科以外にも専門学科のコースがあり、高校受験時点で希望する学科を選択しています。


専門学科には主に、農業工業商業水産家庭看護情報福祉…などの分野の職業教育を行う学科と、職業に限らず、理数体育音楽美術英語…などの授業を中心に行う学科があり、例えば美術系だと、絵画科、造形科、デザイン科…など更に細かい分野の学科がある高校も。


その他、文部科学省の「特色ある学科・コース等を設置する高等学校」一覧には…


表現科、海洋開発科、映像芸術科、国際スポーツ科、自然環境科、航空車両整備科、緑地計画科、演劇コース、理数探究科、芸能文化科、食デザイン学科、建築科伝統建築コース…etc.etc..


…と、ニッチな分野を探求する、実に多種多様な専門学科がある高校も日本各地にあり、見てるだけで楽しくなってしまいました。


とはいえ、一年生のうちは普通科と大きく変わらない一般科目(英国数理社)の授業も多く、学年が上がるごとに専門学科の割合が増えていく学校が多いようです。専門学科では、国家資格や検定試験の合格を目標にしている場合も(大学の推薦入試等で、資格や在学中の制作活動等が評価されたりも)。



2【専門高校】


学校全体で専門性の高い教育カリキュラムを主として行っているのが、専門高校(旧・職業高校)です。高校野球の中継などを観ていると、「〇〇商業高校」や「〇〇工業高校」などの強豪校の名を聞いたりもするでしょう。専門高校には、農業、工業、商業、水産、家庭、看護、情報、福祉といった職業に関わる専門学科が中心に設置されています(一部に専門学科がある高校も含めて「専門高校」と総称することも)。


職業的な知識や技能を習得することに重点が置かれた教育カリキュラムが行われ、国語や数学の授業などもありますが、専門科目の割合が高く、特に座学による知識だけでなく、実習や技能訓練・実験など、体験型の実践的な学習が魅力的。例えば、水産高校では、一ヶ月以上海の上で寝泊まりしながら航海実習をして、カツオの一本釣りやダイビングの実習などを行ったりも。


専門高校では「手に職つける」教育を受けることができ、即戦力として就職にも強いようです。うちの近隣の工業高校卒業生も、自動車系の有名大企業への就職率が高く、年収も高いと聞きます👌

大学進学率は、専門高校全体では約25%ですが、看護系は約90%。大学の一般入試で必要な科目を多く学ばないカリキュラムのため、受験には不利になりがちですが、指定校推薦の枠があったり、在学中に資格等を取ったり、実習等で得た経験が、推薦・総合型入試で活かせることも。


「専門学科」「専門高校」は、全科目満遍なくがんばるのは苦手でも、好きなこと・得意なことなら頑張れる子、早い段階から手に職つけたい子、特定分野に特化したい子などに向いていると思います。



3【総合学科がある高校】


総合学科とは、「普通科」と「専門学科」の科目両方を柔軟に選択できる学科のことで、自分の興味関心や希望する進路に合わせて、受講する科目を選択できます(※小中高の総合的な探求学習の時間や、大学の総合学部とは意味合いが違うので注意!)。


単位制(後述)で自分で受講したい科目を選んで時間割を作るので、大学の履修スタイルに近いかも。一年生は必修科目が中心ですが、2年生以降は幅広い選択科目の中から選べることが多いようです。専門分野はおおまかに、人文系列、自然科学系列、情報ビジネス系列…のように「系列」でジャンル分けされた科目群から選ぶことになるようです。必要な単位数を習得すれば、卒業となります。


主体的にマイペースに学びたい子や、一般科目だけでなく職業的な知識も身に着けたい子などに向いているのではないでしょうか。



4【教育課程特例校】


教育基本法で定められた一条校でも、学習指導要領によらない特色ある教育カリキュラムの実施を国から特別に認められた学校を「特例校」と言います。高校では教育課程特例校学びの多様化学校(不登校特例校)があります。特例校では、普通科でも特色ある授業が行われることも。


うち、「教育課程特例校」は、学校または地域の実情に合わせて、一部または全ての授業等で特色ある教育カリキュラムの実施が国から認められている公立・私立の学校です。実は、小中高合わせて、全国に1845校もあるんですよ(2024.4現在)。


高校での代表例には、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)指定校・認定校があります。

理数系の教育に重点が置かれ、高校段階から大学や企業等とも連携しながら、フィールドワークや実験・開発等の高度な研究を行ったり、論文制作や国内外で学会発表などをすることも。


現在、全国で218校がSSHに指定されており(令和5年度)、科学技術振興機構の一覧には、中学受験でお馴染みの難関中高一貫校や、有名国立・私立大学附属校、地元の公立トップ高校などの名も。

ハイレベルな理系教育が期待できるので、科学好きな子や、理系の研究者になりたい子などは、充実した高校生活を送れるのではないでしょうか。

(※SSH指定期間は5年間。同様のSGH指定校制度は2021年に事業終了し、SGHネットワーク参加校WWL拠点校等が取り組みを引き継ぎ)


その他の教育課程特例校の例としては、一部または全ての授業を英語で行うイマージョン教育国際バカロレア(IB)が取得できる教育カリキュラムの実施校、日本史の時間で地域に密着した歴史を学んだり、総合の時間に地域振興に関わる授業を行う高校…などなど。オルタナティブスクールのシュタイナー学園なども教育過程特例校の認定を受けているようです。



5【学びの多様化学校(不登校特例校)】


不登校の児童生徒の実情に配慮した教育カリキュラムでの運営が国から認められているのが、「学びの多様化学校(不登校特例校)」です。

高校での不登校特例校は、現在全国で11校(2024.1 NHK調べ)ですが、不登校児童生徒の増加を受け、将来的に全国で小中高合わせて300校の設置を文部科学省は目指しているそう。今現在、特例校ではないけど不登校対応等に力を入れている高校等も、今後、認可されていくかもしれません。


学校形態には、全日制・通信制定時制・全寮制などがあります(小中学校では分教室型も)。

おおまかな特徴としては、少人数や個別指導での学習で、授業時間が短かったり始業時間が遅かったり…と、自分のペースに合わせて無理なく授業を受けられるようになっており、授業内容も、学年にとらわれずに習熟度別や個別最適化された学習がしやすい環境が整っている事が多く、体験型の学習や、オンライン授業、PC/タブレット学習、ソーシャルスキルトレーニングなどが取り入れられたりも。

カウンセラーやソーシャルワーカーの常駐、支援教育に詳しい教員、複数担任の配置…等がある学校もあり、心身に不調がある子や発達障害傾向のある子も、手厚いサポートが期待できます。




<「全日制」「学年制」以外の高校>


高校の教育過程には、「全日制」「通信制」「定時制の3種類があり、「全日制」以外の高校は…


6【通信制高校】


近年、大きく生徒数を伸ばしているのが、通信制高校。

「通信制」の名の通り、基本的には、オンライン授業や動画視聴などで自宅学習し、課題やレポートを提出したり、テストを受けたりしますが、週に何日学校に通うかを自分で決めたり、スクーリングと呼ばれる登校日が設定されていたり、イベントや合宿等での対面の活動があることも。アニメ、マンガ、プログラミング…等、多様な専門学科を設置している通信制高校も。


通信制高校は、不登校・発達障害等で普通の高校に進学・通学するのが難しい子や、高校中退した子だけでなく、働きながら高卒資格を得たい人、スポーツや芸能等の個人活動等に専念したい子、専門学校や予備校とのWスクール生…など、背景も年齢も多様な生徒が在籍しているようです。


新入生の募集は4月/9月などか、随時受付。選考方法は「面接と作文」などが多く、基本的に不合格はあまりないようですが、募集定員や受け入れ体制の都合、受験生の面接時の態度などで入学できない場合も。他校からの不登校生・中退者などの転編入も、随時または年に数回受け入れている場合も多く、それまでに取得した単位(学年制の場合は前年度まで)を引き継いでくれます。


卒業には、3年以上の在籍期間が必要ですが、通信制は後述の「単位制」を採用していることが多く、規定の必修科目を含めた74単位を取得すれば「卒業」となり、高校卒業資格が得られます。


通信制は、自己管理能力や主体性も必要となり、大学進学率は24%くらい(参考:文部科学省「学校基本調査」)。自宅で学習しにくい子や、大学進学を希望する子等は、学習センターやサポート校などを併用して、自己管理や学習サポート・受験対策等をフォローしてもらうことも。



7【定時制高校】


親世代には定時制=夜間のイメージがあると思いますが、最近の定時制高校は、2部制・3部制になっており、昼間に通うこともできます。公立校が多く、費用面の負担も少なめ。平日毎日登校が基本ですが、授業は一日4時間程度で、働きながら通いやすくなっています。ホームルームや給食、生徒会や学校行事などもあり、全日制高校に併設の場合は、部活などの一部の活動を一緒に行うことも。


単位制」を採用している学校が多く、3年以上の在籍期間と必要な単位数の取得が卒業要件となり、高校卒業資格が得られます。4年で卒業する人が多いようですが、別の部や全日制の一部の授業を受けたり、高卒認定試験の単位認定など、単位の取得次第で3年での卒業も可能なことも。


入試方法は、「学力試験(3教科)+調査書+面接」が多いですが、内申点は合否にあまり影響しないようです(面接時の態度は大事みたいですよ)。15歳以上なら入学に年齢制限もないため、在籍生徒は、中学での不登校経験者や高校中退者の他、社会人なども多く、定年退職後の年配の方や外国人など、実に多種多様です。今は、いわゆる不良・ヤンキーの子もそんなに多くないみたい。


就職サポートも手厚く、就職率が3割程と全日制高校より高い反面、大学進学率は低め(例外あり)。また、中退率は7-8%と全日制や通信制と比べて高めです。働きながら高卒資格を得たい人の他、直接人と関わって多様な人と交流したり、学び直しへの意欲の高い人などに向いているかもしれません。


また、東京都の取り組む「チャレンジスクール」なども、定時制高校の新しい形だと思います。

" 昼夜間の定時制総合学科単位制の高校で、自分のライフスタイルや学習ペースに合わせて各時間帯(午前・午後・夜間の三部)を選んで入学できます" …と、不登校・高校中退した子が学び直しやすく、学力試験や調査書不要で入学でき、心のケアなどに重点を置いた手厚いサポート体制があります。

(参考:東京都教育委員会「チャレンジスクール・エンカレッジスクール」)



8【単位制高校】


高卒資格を取るための単位取得方法には、「学年制」と「単位制があります。


学年ごとに必要な単位数と履修する授業が決まっている「学年制」に対し、「単位制」の高校は、学年による教育課程の区分を設けず、決められた単位を修得すれば卒業が認められる学校のことで、通信制・定時制だけでなく、全日制の高校でも単位制を採用している学校もあります。


学年制では、一つの科目の単位が取れないだけでも「留年(原級留置)」となり、翌年度も全科目取り直さないといけないのですが、単位制では落とした単位だけ再履修したり、必修科目でなければ別の科目で置き換えればいい、というメリットも。

ただし、各校が定める卒業要件や、必修科目を含む74単位以上取得しないと卒業できないので、卒業までに3年以上かかることも(在学期間に限度がある場合、退学になるので注意!)。


選択できる科目の幅も広く、専門学科などの特色ある科目を設けている学校も多いです。

自分の興味関心や希望する進路、ライフスタイルに合わせて自分で時間割を作ることが可能なので、自分に不要であれば、古文や漢文を履修しなくてもいいのです。不登校の子だけでなく、留学・スポーツや芸能活動等でがんばりたい子なども、自分の都合に合わせてスケジュールを組みやすいと思います。


また、高校中退者の前籍校での取得済みの単位の認定や在籍年数が加算されたり、高卒認定試験の合格科目を単位認定したり、逆に単位制高校で習得済みの科目を高卒認定試験では免除されたり…と、柔軟に単位を相互認定することも。




<「高等学校」以外で、大学入学資格等が得られる学校等>


上記までは「高等学校」で、卒業すると高校卒業資格が得られる学校です。

ですが、高校以外にも卒業すると大学入学資格が得られる学校等には、一条校の特別支援学校高等部」「高等専門学校(高専)と、専修学校の高等専修学校の他、海外の学校等で規定の教育過程を修了した場合…等があります。



9【特別支援学校高等部】


特別支援学校の入学対象者は、「視覚障害」「聴覚障害」「知的障害」「肢体不自由」「病弱・身体虚弱」の障害がある子であり、支援学校ごとに、受け入れる障害種別や障害の程度が区分されています。

発達障害があっても知的障害がない場合等は、入学対象外となることがほとんどですが、一部の自治体では、受け入れの知的障害の程度に、ある程度の幅を持たせていことも。


特別支援学校高等部へ入学するには受験が必要となり、学力検査と面接等があります。就学相談して自治体の教育委員会が入学の可否を判定する義務教育段階とは方法が異なるので、中学からの進学を希望する場合、特別支援コーディネーターの先生や、自治体の学校教育課などに早めに連絡し、支援学校の見学会・教育相談等にも参加しておくといいでしょう。

また、数は少ないながら私立の特別支援学校もあり、中には全寮制・男子校・女子校の学校も。出願資格や受験方法は独自の基準があるので、各校のHP等をご確認下さい。

(参考:LITALICOライフ「特別支援学校とは?入学の流れと対象、教育環境・内容を解説」の私立の特別支援学校一覧)


特別支援学校高等部は、1クラス8名以下で、特別支援学校の教員免許を持った専門知識のある先生等が多く、生徒一人ひとりに合わせた手厚い教育が受けられます。将来の自立を見据えて、基本的な生活習慣やソーシャルスキルを身につけたり、就労のために必要な技能の訓練等が行われたりも。


卒業すると「特別支援学校高等部卒」となり、大学入学資格も得られます(※ただし、カリキュラムによっては入学資格にならないことも)。

大学等への進学率は2%程と高くはありませんが、就職率は3割と高く、特に職業訓練に重点を置いた支援学校・教育過程等では就職支援が手厚く企業の障害者雇用枠での就職、就労移行支援事業所などの利用、社会福祉施設などでの福祉的就労などに繋がりやすくなります。また、社会福祉施設に入所・通所する卒業生も6割ほどいるようです。


専門的で手厚い支援体制の元、将来の自立に必要なスキルを一つひとつ身に着け、卒業後は、障害者雇用枠での就労や、親なき後のサポートにつなげたい親子さんのニーズに合っていると思います。



10【高等専門学校(高専)】


中卒者を対象とした、専門的な高等教育機関が「高等専門学校」いわゆる「高専」です。

現在、全国に国公私立合わせて57校あり、5年一貫教育が行われています。高専ロボコン(ロボットコンテスト)のテレビ中継などで、生徒さん達の高度な技術や専門知識に驚いた人もいるでしょう。


高専は、実践的・創造的な高度な技術者の育成を目指した教育が行われ、大まかに工業系商船系の学科がありますが、経営情報学科や国際流通学科など、その他の学科がある学校も。

高専の数は少なく、ハイレベルな専門教育を受けられるので、入試倍率も高い傾向があるようです。教育課程は、理数系を中心とした基礎科目と専門科目をバランスよく学び、実験・実習にも重点が置かれ、最新の研究施設・機器などの設備環境も充実。企業等でのインターンシップなども。

そして、全員、5年生で卒業研究と論文の執筆・発表もあります。


そのため、高専生は技術者・スペシャリストの即戦力として産業界からも期待され、就職にめちゃめちゃ強く、就職希望者の内定率はほぼ100%で、企業のほうから声がかかることも多いようです。

一方、大学等の進学者も4割程います。3年次修了で大学入学資格が認められるので、同級の高卒生と一緒に入学することもでき、5年次で卒業すれば「準学士」の称号が与えられ、規定を満たせば大学3年次への編入資格も。また、さらに高専で2年間、より専門的に学ぶ「専攻科」への進学ルートも。


好きなことを極めたい子や、ものづくりが大好きな子、スペシャリスト・一流エンジニアを目指したい意欲の高い子などに向いているように思います。



11【高等専修学校】


高等専修学校は、名称が専門高校高等専門学校(高専)と似ていてややこしいのですが、簡単に説明すると、中卒者対象の専門学校(高等課程)です。


いわゆる「一条校」ではないものの、3年以上の修業年限や授業時間数等の一定の要件を満たした「大学入学資格付与指定校」では、卒業すると大学入学資格も得られます。通信制定時制高校の技能連携校として、高卒資格を同時に取ることが可能な場合も。また、高校同様、全ての高等専修学校は「高等学校等就学支援金制度」の対象となります。


幅広い分野での専門的な職業教育を行い、中学での不登校経験者や高校中退者のセーフティネットとしても近年注目され、少人数制・カウンセラー等の配置でサポート体制を整えている学校も。生徒の約2割に不登校経験があり、また、発達障害等があり支援が必要な生徒も2割程いるそう。

入学試験は、「面接・作文・書類選考」等がありますが、概ねハードルは高くないようです。事前の体験入学や見学会の参加を出願の必須条件としている場合も。


専門分野は、工業、農業、医療、衛生、教育・社会福祉、商業実務、服飾・家政、文化・教養の8つがあり、学習指導要領によらない各校独自のカリキュラムで、実践的な職業訓練や技術、資格の取得のため等の専門科目と、国語や体育などの一般科目も(専門科目の割合などは各学校により異なります)。企業から講師を呼んだり職業体験なども。修学旅行や遠足、学園祭などの学校行事もあるようです。


高等専修学校で資格/受験資格の取得可能な国家資格は、例えば、自動車整備士、建築士、介護福祉士、調理師、理容師、美容師など。

卒業後は約半数程度が就職し、目指せる職業も、エンジニア、プログラマー、寿司職人、ファッションデザイナー、ネイリスト、事務員、ホテルフロント、パティシエ、イラストレーター…etc.と実に様々専門課程(高卒者対象の専門学校)に進学する子も多いようです。


高等専修学校は、なりたい職業がはっきりしている子、自立のために手に職つけたい子、好きなことを中心に学びながら楽しく学校生活を送りたい子…などに合っているのではないでしょうか。




<「進学」以外の選択肢>


現在、高校進学率は97%超。ただし、高校中退者なども含めて、最終学歴が中卒者の割合は、全世代平均で2割、10代だと1割くらいで、私は「思ったより多い」って気もします。


12【学卒者向けハロートレーニング(公的職業訓練)】


「進学はしないけど、中卒で今スグ社会に放り出されるのは不安……」という子もいるでしょう。そんなときに覚えておいて損はないのが、「ハロートレーニング(公的職業訓練)」です。


中卒・高卒・高校中退者などの学卒者向け訓練は「普通課程」となり、都道府県の「〇〇県立高等技術専門校」「〇〇職業能力開発センター」などの公営職業能力開発校・委託校等で実施しています。

「普通課程」は、中卒者は2年間、高卒者は1〜2年間で、職業に必要な基礎的な訓練を習得(別途、障害者、社会人向けの課程も)。訓練科には、 OA事務科、機械加工科、自動車整備科、木造建築科…などを始め、実践的で多様な科があり、就職率は94.2%令和4年度)と高いです。


例えば、私の県の場合、「〇〇県 ハロートレーニング 学卒者」で検索すると、県の案内サイトが。それによると、授業料は年額6万円程(自治体により異なります)。公的運営なので、専門高校高等専修学校等より費用が少なく職業訓練受講給付金の支給を受けながら受講できる場合も。選考には「面接と筆記試験」などがあるようです。


中卒者がハロートレーニングを希望する場合、お近くのハローワークで職業相談→願書提出という流れ。入学・修了すれば、履歴書の職歴欄資格欄にも書けます。各都道府県で、授業料や実施学科、募集要項等が違うので、個別にご確認下さい。

(参考:厚生労働省ハロートレーニング(学卒者訓練)」)


また、自治体や企業などが、伝統工芸の職人や自社で働く技能者などを養成するための職業訓練施設・職業能力開発校等を運営していて、中には年齢・経験不問の募集や、全寮制で訓練生として手当がでる場合も。(参考:四季の美「伝統工芸の職人になるには?職人を養成する施設、事業一覧」、「トヨタ工業学園」「日野工業高等学園」「デンソー工業学園」)



13【学歴不問の就労】


ハローワーク求人における中卒者の就職内定率は85%以上で(うち正社員雇用は35%程)で、高卒・大卒よりも低いものの、決して悪くはありません。ただし、募集自体が少ないようです。

でも、お給料や昇進も高卒・大卒と比べて不利になる傾向があり、年齢・学歴や、資格の受験資格等で、就ける仕事に制限ができてしまうことも……と、なかなか厳しい現実もあるようです。


学歴不問の仕事やアルバイトなどは、ハローワーク経由の他、求人サイト等でも探せますし、最近は短時間・履歴書不要のスキマバイトなどもアプリから手軽にアクセスできるようになりました。いろんな仕事を気軽に試してみて、自分に合った仕事や働き方を見つけていくのもいいと思います(※ラクで短時間・高収入など、話がうますぎる仕事は注意!)。


中卒で働く場合も、土木建築、介護、農業、飲食店などの人手不足分野での求人はそれなりにあるようです。現在少子化で、人手不足や後継者不足に悩む職域は多く、中には社員寮や住み込みで、衣食住の面倒を見てくれる場合も。


余談ですが、苦学生時代、いろんなバイトを経験した私の個人的オススメは、農家のお手伝いですね。

余った野菜とか沢山くれるし、おおらかで人生経験豊富なお年寄り達からいろいろ学べ、のんびりお茶休憩して、せっせと働くと「そんなにがんばらんでいい」ってお叱りを頂戴したほどです😂 

気持ちがラクになった上、日光浴びて体力もついて、心身共に健康になりましたよ。


ただし、これらの仕事が人手不足なのには、それなりに理由があります。

将来的にIT・効率化が進めば負担が減る期待もありますが、現状では仕事がキツイ上、それに見合った報酬が得られなかったり、長時間労働や職場環境が悪かったり…と労働条件が厳しくて離職率が高いことが多いという点は、十分考える必要があるでしょう。


また、公務員も職種によっては学歴不問です(ただし、年齢制限があることも)。

例えば、自衛官や警察官、国家公務員、公園整備・インフラの維持管理・ゴミ収集などをする地方公務員など。ただし、公務員試験のための勉強や、高卒程度の学力が必要とされる職種も。

ちなみに、国家公務員である陸上自衛官を目指す、陸上自衛隊高等工科学校は、全寮制・授業料無料・食事つきの上、お給料も出て高卒資格もとれます(募集は17歳未満の男子のみ)。



14【高卒認定試験(高等学校卒業程度認定試験)】


「やっぱり、高卒くらいの学力はあったほうがいい」「学びたいことができたから、大学に行ってみたい」「資格を取って、より良い待遇で仕事したい」などと思った時には、進学以外に、「高卒認定試験」という選択肢もあります。


正式名称「高等学校卒業程度認定試験」いわゆる「高卒認定試験」「高認」は、8科目に合格すれば「高卒者と同程度の学力がある」と認定されます(※高卒資格が取れるわけではないので注意)。

合格すると、大学や専門学校の入学資格の他、公務員試験や国家資格などの受験資格に「高卒以上」等の制限がある場合も受験できます(ただし、資格によって受験年齢制限があることも)。


受験資格は、受験年度内に満16歳以上になる人なら誰でも可で、中卒者の他、高校中退者、高校在学中の不登校生、社会人・外国籍の人などが受けることも。18歳未満で全科目合格した人は、18歳になった時点で高卒認定となります。

また、高校在学中の不登校生等は、高卒認定試験で合格した科目が在籍校で単位認定されたり、逆に、高校在校生・中退者の履修済みの科目英検などの資格取得で一部の試験科目を免除されることも。


試験は年に2回実施され、試験会場は各都道府県の47会場の他、少年院等でも。受験料は科目数に応じて異なります。マークシート形式で、一度合格した科目は次からは受験しなくていいので(有効期限なし)、何度でも挑戦できます

勉強方法は、教科書・参考書などで独学で進めることもできますが、資格系の通信講座や、学習塾等でも対応しているコースがあることも(文部科学省HPで過去問が公開)。

最新の実施・出願情報等は、文部科学省「高等学校卒業程度認定試験(旧大学入学資格検定)」をご確認下さい。


また、中卒者で大学受験したい場合は、高卒認定試験の他、大学が独自におこなう大学入学資格認定試験を実施していることもあります。



一度きりの自分の人生だから…


もちろん、中学を卒業したからといって、必ずしも、絶対に今スグ進学や就労をしないといけないってわけでもないと思います。


特に心身に不調がある子などは、まずはその回復を優先する必要がありますし、おうちの事情が許すなら、ゆっくりと自分の人生について考えたり、趣味や独学を探求したり、全国各地を旅したり…とか、毎日学校の宿題やテストに追われていたら、できないこともあるでしょう。

また、おうちで家事手伝い等をすることでも、家事代行やヘルパー、清掃業、調理補助など、様々な仕事につながるスキルが身につきますからね。18歳になれば運転免許も取れますし。


そして、ここに挙げた14の選択肢以外にも、例えば、海外留学や、過疎地・離島などへの国内留学、宮大工や落語家・相撲部屋などへの弟子入り、伝統芸能の研修生、家業を継ぐ、起業する…などなど、あらゆる道が無限に考えられます。


大部分の子が通る「普通のルート」から外れることに、不安がある子もいるでしょう。


でも、私が最近、挫折から立ち直って大学再受験することにした長男に、何度も話しているのは……


「一度きりの自分の人生なんだから、まずは、思った通りにやってみたらいい。それでもし、選択を間違っても、後からいくらでも軌道修正できるから」


…ということ。

特に、若いうちの数年程度の寄り道・回り道は、どうってことありません。


義務の教育を終え、大人の入り口に立ったばかりの15歳が進むのは、もちろん「普通の高校」という青春の王道だって悪くないけれど、それ以外にも、柔軟に視野を広げれば、多様なルートや自分の可能性があること、覚えておいて損はないと思いますよ。

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