4月から長男が学校にiPadを持ち込んでいいという許可を頂きました! しばらく、学校とどう話し合うのか、説明するのか、どう使って行くのか、といったことを、超具体的に発信します。「集団で学ぶこと」に困難さのあるお子さんの道が開けるよう、楽々かあさんも全力で応援しますからね。
【2023.追記】
・この投稿はコロナ前の2016年(当時、長男は小4)のもので、全小中学生にタブレット等が配布された現在とは状況が違いますが、発達障害・LDのある子が合理的配慮をお願いする際の交渉術のご参考となれば幸いです。
・交渉時点では、通常学級での使用を前提に学校と交渉して許可を得ていますが、その後(別の理由で)支援級に転籍しました。
■ 発達障害のある子のiPad導入への道〜合理的配慮の交渉術〜編
私は交渉ごとは元来とっても苦手なんです。でも、うちの子へのこだわり対応で鍛えられて、だいぶ交渉上手になってきました。 以前より、ちょこちょこと「iPadの持ち込みとかってどうなんでしょう〜」と、学校側に軽く探りを入れていて、その時点では「そういうのは市全体で足並みを揃えないと…」とのことでしたが、何度か希望があることを繰り返し伝えていたら、特別支援コーディネーターの先生も、先行事例などを調べて情報収集してくれていたようです。 で、長男の「学校でiPadを使いたい!」という意思が固まり、正式に「使わせて下さい」と伝え、特別支援コーディネーターの先生(教務主任)と、何度かお話しさせて頂きました。
事前に準備したもの:
資料 iPadやマルチメディアデイジーの先行導入事例や、文部科学省の障害者差別解消法の対応指針や導入事例の資料(※1)などをプリントし、うちの子に近い事例にふせんを貼る。
手持ちのスマホ、デジカメなど 今あるものでいいので、具体的にイメージができそうな機器。 スマホには可能な範囲で、参考になりそうなアプリなどを入れておく。
子どもの知能・視機能検査の結果、普段のノートやテスト、成績表など 管理職の先生などは、普段の子どもの様子や特性、学習の状況など、詳しく把握してない場合もあるので、一から説明するつもりで"証拠”を準備するほうがいいと思います。(うちの先生は、長男の様子をよくみて下さっていたので、話が早かったです)
交渉の流れ:
今の状況 クラスでは授業のスピードに全くついていけない。家でもいろいろ工夫してみたけど板書を写すのが間に合わない。でも、1:1の取り出し個別指導ではしっかり取り組めていることなど。
その理由と提案 なぜ取り組めないのか、の理由を、WISC-Ⅳや視機能検査、心理テストの結果などの数値を交えて説明。成長に伴い凸凹差が開いていることに加え、集団での学習が負担となって、処理速度が更に低下してしまっていることなど。その苦手さを補う手段として、「補助的にiPadを使わせて欲しい」と提案。
具体的に使い方を見せる (私の)スマホを見せて、「例えば、こんな風に〜」と、板書が出来ない時にカメラの撮影機能を使う、気持ちが切り替えられない時にタイマーを使う、うっかり防止にリマインダーを使う、漢字が出てこない時に辞書アプリを使う…など、希望する使い方を簡易的に、実際に目の前でやってみせる。
学校側の都合も聞いた上で、こちらのできることを提案 学校の事情や、「導入する際、何が問題となるか」相手側の不安材料などがあれば、しっかり聞く。その上でこちらのできることを提案(すぐにその場で回答が難しければ、「できることを考えてみます」と一旦持ち帰ってもOK)
<想定される問題と対案>
校内のインターネット(無線LAN)の生徒への解放が危機管理上難しい
高価な機器の取り扱い
本人に使い方を教えられる時間や人材がいない
他の児童が珍しがる、触りたがる
…などの問題が予め考えられたので、うちの場合は最初から以下のように提案しました。
補助的な機能に限って使うので、無線LANの解放は必要ない(オフラインで使える機能で充分)
保護フィルムや保護ケースも自前で用意し、万が一壊れた場合の保証にも家で入っておく
iPadは家庭で用意したものを本人が予め家庭で十分練習しておく。学校での使い方に慣れるまでは、学級に母が部分的に介助に入る用意がある
他のお子さん達には、私から説明する用意がある
…など「親・家でできるフォロー」を伝えました。
(※各家庭・学校で事情が違うので、必ずしも「親がここまでフォローするべき」ということではありません。お互いに相手の事情や都合を丁寧に聞きながら、「現実的に可能な範囲で、自分にできることは何か」を考えて妥協点を探し、できないことはお互いにフォローし合うのが大事かなと思います。)
5. 妥協案も用意 それでも許可が難しい場合に備えて、「どうしてもiPadが無理な場合、デジカメでもいいから、板書の撮影だけでも使わせて欲しい」「iPadの持ち込みが難しい場合や、それでも学習に取り組めない場合、自宅学習日を作って欲しい」といった妥協案も2,3用意していました。(4まででなんとかなりそうなら、出さなくてもいいです)
結果:
こんな風に伝えたところ、特別支援コーディネーターの先生からは「そういうことでしたら、多分大丈夫だと思いますよ。校長先生に話してみますね」という、前向きな回答を頂き、後日校長先生から… 「なんでも、一度やってみたらいいんじゃないのかな?」 という、柔軟なお返事を頂きました。 その後、必要なものを揃えてから、再度使い方などをチェックして頂く流れになりました。 iPadの持ち込みは、うちの学校では初めての試みですが、先生から聞いた、先進的な取組みをしている地域での全校的な先行導入例や、法的な背景の整備などの昨今の流れから、地方でも「合理的配慮」へのハードルは、徐々に下がって来ている感触でした。 その学校で最初に切り開く親子さんは結構大変だと思いますが、合理的配慮として使う子が増えるほど、導入時や子どもへの周囲の理解のハードルは下がります。 学校の状況によっては、そんなに簡単にはいかない場合もあるかもしれませんが、応援しています! ********* ご購読ありがとうございます。 子どものこだわりに、交渉しながら妥協点をお互いに見つけるということで対応してきたら、いつの間にか大人同士の対人関係やお仕事でも役立つ、交渉術が身に付いてきました。 「凸凹さん」の子育てから、学べることは本当に多いです。 寒暖の差がありますが、お身体を大事にお過ごし下さいね。 楽々かあさんより。
2016.3.4 Facebook投稿
※1 当時私が使った資料ではありませんが、文部科学省の「新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議」のための資料「日本の特別支援教育の状況について」(R1.9.25発行)の「8.合理的配慮の提供」(p.84-)の部分が、高校入試や大学入試の受験上の配慮や、高校入試を視野に入れた中学でのICT活用例などがまとめてあり、現時点ではLDのあるお子さんの参考になると思います。
先生向けに参考になるサイト:
合理的配慮の学校での導入・実践事例などが多数検索でき、児童生徒や学校での詳細について個別の資料がダウンロード可能。自治体・学校側からの相談も受け付けています。
関連著書:「発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母のどんな子もぐんぐん伸びる120の子育て法」 大場美鈴・著(ポプラ社/2017.2)p194-収録 →Amazonで見る