ようやく長男の大学進学が決まり、ほっとしているところです(春より、自宅から自転車通学です)。
6年間お世話になった私立中高一貫校も残りわずか。
「あ"〜!卒業したくない。ずっと高校生でいたい」と言ってます(…それは困ります😅)
■私立校でも合理的配慮が法的義務に
お子さんが発達障害・グレーゾーンで、中学受験を検討中だったり、既に私立中進学を決めたご家庭などは、支援級も通級もない私立中で大丈夫だろうか、先生は発達障害対応してくれるだろうか、などと心配になることもあると思います。
2024.4月より、改正障害者差別解消法が施行され、私立中学・高校や私立大学での合理的配慮も、努力義務から「法的義務」へと変わります。
これが、現実的にどの程度反映されるのか、現時点では私には分かりませんが、共通テストのように、合理的配慮の可否の線引きがハードル高いのだとしたら、実質大した影響はない気もします……。
……とはいえ、お子さんが私立中学に進学予定で不安がある場合や、現在在学中で支障や困り事がある場合には、学校側に相談してみる価値はあると思います。
学校によっては柔軟に対応してくれる可能性もありますし(特に国公立教育大の附属校や、発達障害・不登校対応に力を入れている学校等なら、話が早いでしょう)、相談する方が増えれば私立でも全体的に改善されていくはずです。
まあ、現時点での私立中学での発達障害対応・合理的配慮については、本当に「学校による」としか言えず、私もうちの子達が通うA中学についてのお話しかできませんので、これが「私立中学全体での一般論」ではありません。
でも、他にあまり具体的な情報もなかなか見つからないと思うので、私の知っている範囲でよければ……という感じでお話しますね。
■子どもの個性とマッチした学校なら、合理的配慮なしでも案外大丈夫かも
うちの子達が通うA中学について、私の結論から言えば「個別の発達障害対応・合理的配慮はほぼないけど、それであんまり問題ありませんでした」という感じです。
というのも、A中学自体が、元々大変合理的で柔軟な校風の学校で、子どもの個性とマッチしていたので、あえて個別の配慮をお願いしなくても、大抵のことはなんとかなってしまっていたからです。
(とはいえ、「発達障害」と一言で言っても、凸凹差や特徴、情緒・社会面の発達、周りの環境など、濃淡や緩急が様々なので、同じ学校でもお子さんによっては負担を感じる可能性もあります)
うちの長男が、彼の発達障害を理由とした大きな困りごとで学校側に合理的配慮を相談したのは、中高一貫の6年間過ごした中で、たった一度だけでした。
(ただし、小さな困りごとを本人の努力や工夫で解決したり、発達障害以外を理由としたトラブル対応やメンタル面での配慮のお願いなどは何度かしました。)
小学校時代、長男は主に…
字を書くのが苦手
空気が読めない
忘れ物が多い
…などの面で、本人が負担を感じたり、注意や叱責を受けたり、親がフォローしたりすることが多かったのですが、私立中学に進学してからは、上記のことで困ることはほどんどありませんでした。
では、なぜ長男は配慮なしでもあんまり困らなかったのか、考えられる主な理由を3つあげますね。
理由1:ICT化が進んでいる
A中学ではコロナ以前から生徒一人一台iPadを所有し、授業等でも使っていました。そのため、中学入学までにかなり書字障害が改善できていたこともありますが、やや書字に困難さがある長男でも、あまり過剰な負担がかからなかったのです(漢字書き取りの宿題以外は)。
iPadは授業中、筆箱と同様いつでも使っていいので、毎日持ち帰って、宿題などでも時々使います。
先生方もICT機器の取り扱いに慣れていて(ご高齢の非常勤の先生を除く)、コロナ休校中のZOOMによるオンライン授業なども、あっという間に立ち上がって、各自の自宅などから時間割通りに授業を続けてくれました。
A中学でのiPadの使い方は、例えば…
<宿題の連絡と提出>
専用グループウェアで生徒に宿題・課題の連絡があり、回答用フォーマットに入力して送信したり、動画やスライドなどを作って提出したり、手書きのノートを写真に撮って送ったり…など。
レポート課題や作文も、大抵はワープロ打ちでOK(手書き指定は、どちらかというとペナルティ的な使われ方をされている印象…)。メールで教科担任の先生に直接質問もできます。
<ノートテイク>
先生にもよりますが、ノートテイクに写真機能を使わせてくれる方は多いです。ただ、定期試験の前に紙のノート提出が必要な場合もあるので、あくまで手書きで板書を写す時間が足りない時の補助的なもの(写真撮っただけでノートしたことにはなりません)。
<検索、辞書機能>
ちょっとしたことはその場ですぐに検索できるので、漢字が正確に出てこなかったり、英単語のスペルを確認したり、大人と同じような感じでささっと使っています。
このように誰でもいつでもiPadが使えるので、LD傾向のある子も負担が減る上、「〇〇くんだけズルい」などと言われることもありません。
ただし、iPadの"乱用"には学校側も頭を悩ませていて、授業中こっそり動画観たりゲームアプリで遊んでしまう子もいるので、中には使用制限がかかっているクラスもあるようです。
おそらく大学でも、スマホ持ち込みでの板書の撮影や、ワープロ打ちのレポート作成&オンライン提出などが当たり前になっている学校がほとんどだと思います。
理由2:個人主義・実力主義
A中学は比較的小規模な学校ということもありますが、学校の考え方が欧米的な個人主義に近い傾向があるので、日本的な「集団主義」や「同調圧力」は、無縁とまでは言いませんが圧は弱く、むしろ「他人がどうであれ、自分で判断できる」「自己主張できる」ことが評価される校風。
なので、空気が読めないと思われがちなASD傾向のある子は、逆にそれを「強み」として活かせる場面も多々あります(ただし、あまりに自分勝手過ぎる行動は怒られます)。
外国人講師の先生からは特に、空気を読んで周りの出方を覗うと、却って注意されるくらいです。
行事なども効率化され、体育祭も事前練習の必要がほとんどないレクリエーション的な要素が強いので、「全員ができるまで練習する」とか、「一糸乱れぬ動きで揃うまで」とか、「全員強制参加で朝練」とかは一切ありませんでした(その代わり、生徒全員が一致団結する姿は滅多にないです)。
DCDなどがあって運動が苦手な子でも「自分のせいで、みんなの休み時間がなくなった」など、二重につらい思いをすることもありません。
全体的に理不尽に「連帯責任」が問われることは、あまりないです(ゼロではないですが…)。
なにかやらかしても個別に注意されることが多く、「お前のせいでおれまで怒られた」などとクラスメイトから責められないので、みんなと違う行動を取りがちな子も、比較的受け容れられているのではないかと思います。
(ただし、極端な問題行動には「スパイファミリー」のイーデン校の"トニト"みたいなシステムがあり、規定数を集めると退学勧告されるようです)
また、部活などでも先輩後輩の上下関係がゆるく、実力があれば下級生が部長になることも(私立中の中には上下関係が厳しい学校も。近隣の伝統女子校では「スクールバスでは先輩に席を譲らないといけない」なんて、暗黙のルールもあるのだそう)。
A中学に限らず、中高一貫だと校内に高校生がウロウロしてるので、思春期真っ只中の中2・中3のパイセンがあまり大きな顔ができないメリットはあると思います。
小学校時代、長男は上級生から「生意気だ」と絡まれることが多かったのですが、A中学では部活の先輩後輩関係で嫌な思いをすることはありませんでした。
個人主義で自由な校風の学校だと、全体的に「空気の圧が弱い」印象がするので、空気の読めない子や、集団行動から外れがちな子も、多少気がラクなのではないでしょうか。それでも、思春期特有の空気の読み合い・腹の探り合いはどこでもあるので(特に女子は)、苦労するとは思いますが…。
理由3:先生の柔軟さ
長男の場合、先生方の柔軟さが「配慮なし」でも大丈夫だった一番大きな理由だと思います。
A中学の先生方は、柔軟で親しみやすい方が多いです(全員とは言いませんが…)。
厳しい先生も中にはいるのですが、少なくともパワハラまがいの強圧的な態度で、大きな声で生徒を威圧したり、ヒステリックに怒鳴ったりする先生はまずいません。
もし、そういう先生がいたとしても、翌年にはいなくなっていると思います。
A中学に限らず、私立は企業と同じく経営努力が必要なので、生徒や保護者からクレームが多い先生を放置していれば、すぐに悪評がネットに書き込まれて受験者数にも影響でますから、対応せざるを得ないのではないでしょうか(逆に優秀な先生が、より高待遇な他校に引き抜かれることも)。
そして、中には教え方が分かりにくかったり、経験不足だったり、長男と相性が合わない先生も当然いましたが、それでも「話せば分かってくれる」先生が大半でした。
「課題が提出期限までにどうしても終わらないので、ちょっとだけ待って欲しい」などのお願いを「しょーがないな」といいつつ聞き入れてくれたり、忘れ物しても「次回持ってきてね」で済んだり、先生のを貸してくれたり……。
(ただし、課題を提出しなかったりすると、黙って減点されて成績に反映されます。)
ちょっとしたミスや失敗程度なら、片目をつぶって柔軟に対応したり、軽く流してくれたので、うっかり屋の長男でも、みんなの前で過剰な叱責を受けることは6年間なかったです。
極端なやらかしをした子は「別室指導」になるので、本人のプライドも守られるし、クラスメイトが叱責される姿を見ると一緒につらくなる次男にも負担が少ないと思います。
また、忘れ物に関しては、置き勉できる鍵付きロッカーが生徒一人に一つずつあるので、そんなに心配いりませんでしたが、宿題に必要なものの「持ち帰り忘れ」は時々ありました。
でも、提出期限にある程度の余裕があることがほどんどですし、急ぎや土日の場合も、ワークのページを友達にラインで写真を送ってもらったり、予備の教科書を家に買い置きしたり、早めに登校して間に合わせたりで大抵はなんとかなりました。
弁当箱や水筒を持ち帰り忘れると「私が」困りましたが……。登校前にコンビニによったり、校内の自販機で交通系ICカードを使って買えるので、本人は困らず。
……まあ、こんな感じで凸凹長男は、中高一貫の6年間をマイペースなまま、過ごしてきたのです。
以上は、あくまでうちの子達が通うA中学での話であり、私立中学は本当に学校ごとに違うので、お子さんの個性と校風や教育方針が合っているかがポイントだと思います。
ただ、A中学は取り立てて特別な教育方針の学校というわけでもなく、こんな感じの私立中は、そこまで珍しくもない気がします。
■環境側の課題を改善すれば、必要ない合理的配慮もあるのでは?
「なぜ、長男は私立中高一貫の6年間で、合理的配慮なしでもほぼ大丈夫だったのか」を、私なりに総じて分析すると…
彼に「字を書くのが苦手」「空気が読めない」「忘れ物が多い」などの特徴があっても、それによって、過剰な負担がかかったり、集団から排除されたり、叱責を受けたりする「二次的な」弊害が少なくて、そんなに困らなかったので、個別の合理的配慮をお願いする必要まではなかったのですね(本人もかなり努力した部分もあれば、ちょっとだけ嫌な思いを経験したこともあります)。
こう考えると「合理的配慮」って、環境側のほうにも課題があって、それによる二次的弊害や不利益を減らすためのものなら、そもそも、そっちを改善すれば必要ないのでは? って思うことも(これは「私立だから」で済ませていいことではないと思います)。
もちろん、努力では乗り越えられないハンデを補ったり、機会の平等などを確保するために必要な合理的配慮はあると思いますが…。
ちなみに、長男が「一度だけ」お願いした合理的配慮は、宿題の漢字書き取りがどうしても受け容れらなかった時。そのときのお話は、機会があれば、いずれまた。