通級指導教室、取り出し個別指導、加配、特別支援学級、交流学級など、ここでは主に、「支援級か、通常学級か」で迷うタイプの発達障害&グレーゾーンの子に対する、公教育の中での特別支援教育の選択肢について、インフォメーションします。
■特別な支援を受け、本人に合った環境で学ぶ
「障害」とは、本人の凸凹の差と環境との間にあるものなので、本人に合った環境に変えることでも、「障害」状態ではなくなり、学校に適応できるという場合もあります(ただし、こういった支援体制は、地域ごと・学校ごとの差が大きいため、「その子の通う学校では実際にどうなのか」は、直接ご確認をお願いします)。
「支援級か、通常学級か」で迷うタイプの子が公教育の中で受けられる、特別支援教育の選択肢としては…
…などが考えられます(他、特別支援学校に進学されたり、教育支援センターや民間のフリースクールなどに(併用含めて)通うお子さんなどもいます)
【通級指導教室】
通級指導教室(通級)とは、発達障害を含む、比較的軽度の障害のある子に対して、各教科の指導は通常の学級で行い、一方で、個々に合わせた特別の指導(自立活動や各教科の補充指導など)を、特別の指導の場で行うものです。(参考:「最新 子どもの発達障害事典」原仁・責任編集、合同出版) 通級指導教室は、週に一回程度設置校で行われ、生活習慣やソーシャルスキル、集団生活でのルールなどを身につけるための学習・指導などが行われているようです。各教科の学習のフォローや、療育的な運動あそびがある場合もあります。
通級指導教室の設置は、近年増加傾向にあり、公立中学での設置校も、徐々に増えてきているようです。ただし、在籍校で通級指導教室を行っていない場合には、実施日に他校まで保護者が送迎する負担が生じたり、希望者が多くてすぐには通級指導を受けられない、といったケースもあります。 通級指導教室の担当は、必ずしも、専門的知識・経験のある先生がなるとは限りませんが、比較的専門性や指導力が高い先生が配置されることが多いようです。
【取り出し個別指導】
在籍校で通級指導教室が設置されていない場合などに、学校裁量による「取り出し個別指導」で対応して頂ける場合があります(うちはそうでした)。実施する学校も少しずつ増えて来ているようです。 「取り出し個別指導」は、発達障害のある子に限らず、「教室の中で気になる子」に対して、決まった教科や時間だけ、少人数指導や管理職の先生などが、マンツーマンで学習の遅れがあるところや、授業時間内にできなかったことをフォローするものです。これは発達障害のある子だけでなく、なにかの理由で教室に入れない子や、日本語が母国語でない子など、集団で一律に学ぶことに困難さや負担感がある子などにとっても、知っておいて損はない情報でしょう。 ただし、学校が「取り出し個別指導」を行っている場合でも、問い合わせてみないと情報が出て来ないことがありますので、実施の有無は直接学校に尋ねてみるといいかもしれません。
【加配などによる支援】
通常学級で学ぶ発達障害のある子に対して、あるいは、学年全体へのフォローとして、(それぞれ役割も名称も少しずつ異なりますが)加配・補助教員・支援員・介助員・民間の学習ボランティア…などといった形で、サポートをしてくれる教員または民間の方が、支援の対象の子(またはクラス全体や学年ごと)につく場合があります。 例えば、授業に集中しにくい子に付き添って声かけをしたり、友だちとコミュニケーションを取るのが難しい子の仲立ちをしたり、LDのある子に代読や代筆をする…などと言った形で、学習や集団生活のサポートをして頂けます(ただし、学習指導ができるのは教員免許保持者のみ)。
保護者の費用負担はありませんが、自治体で人員と予算を検討するため、親が希望を伝えても難しい場合もあり、逆に、親が希望を出さない場合でも、学校判断で申請されることもあります。自治体によって手厚い人員が確保できる場合と、そうでない場合があります。
【特別支援学級】
就学前に希望を出したり、途中で転籍することで、特別支援学級に入るという選択肢もあります(就学前は自治体に、就学後は学校を通じて希望を出せます)。特別支援学級の定員は1クラス8名が上限のため、少人数での指導を受けることができます。通学区の学校に設置されていない場合には、近隣の設置校に通うことになります。
特別支援学級は、知的障害や身体障害のある・なしによってクラスが分かれる場合があり、発達障害で知的な遅れがない場合には「情緒級」が多いと思いますが、学校の状況によっては、どの状態の障害のある子も同じ1クラスになる可能性もあります。
少人数で、その子に合った方法での学習や、身辺自立や集団生活への適応のためのトレーニング、介助やケアをして頂けます。
特別支援学級の先生は、必ずしも専門的知識・経験のある先生が担任するとは限らないようです。また、副担任や介助員などがつき、複数の先生方で教室に入ることが多いので、子ども一人当たりの教員数が多く、手厚い指導を期待できます。 ただし、少人数とはいえ、同じように特別な支援を必要とするお子さんの学級になるため、常にクラス全体が落ち着いているとも限りません。手のかかるお子さんに先生がかかりきり、といったケースもあるようです。 支援級は1つのクラスに学年を越えて様々な年齢や障害の特性のある、個性豊かな多様な子が集まります。それが得意なことと苦手なことや、精神的な面での凸凹差が大きく、同級生とは話が合いにくい子とっては、プラスに作用することもあります。
学習面では、課題がその子の理解度や学び方に合わせたものが得られるかも学校によって異なります(知的な遅れがない子にとっては簡単すぎる課題が与えられる…など)。子どもの取り組み状況を見ながら相談し、その子のニーズに合わせてもらえるように希望を伝えていくといいでしょう。
特別支援学級は、学校ごと、先生ごと、クラス人数や他のお子さんの状態…などによって、発達障害のある子を伸ばせる環境か、どうかが大きく違ってくる、というのが実情のようです。
従って、入級・転籍を検討する場合は、事前に本人と親が希望する実際のクラスを見学・体験するのが望ましいと思います。何度も実際に見た上で、本人・保護者が納得できる環境であれば、集団教育による負担が大きくて通常学級では難しいことも、少人数の指導で落ち着いて取り組め、のびのびとその子を伸ばせる可能性があります。
【交流学級】
そして、特別支援学級に在籍すると、「交流学級」「協力学級」といった形で、特定の通常学級にも籍を置き、特定の教科や活動を通常学級で受けることができます(例:主要教科は支援級で、体育や図工は交流級で…など)。
交流級の活用状況は学校により様々です。うちの小学校では、最終的に特別支援学級から通常学級への転籍・復籍を目標にしている場合が多く、交流学級で過ごす時間を徐々に増やして、通常学級に慣らしていくことが多かったです。
交流級の活用状況や、「通常学級→支援級」「支援級→通常学級」といった転籍への考え方は地域・学校ごとに違うため、柔軟に運用されている場合とそうでない場合があるようです(うちの場合は、公立小では交流級や転籍は積極的でしたが、公立中ではほとんど行われていないようでした)。 「いずれは通常学級へ」「負担が大きければ支援級へ」といった希望がある場合には、交流級や転籍についても、(進学予定の学区の中学含め)事前によく確認されるといいでしょう。
■学校の相談窓口は・・・
こういった特別の支援を希望する場合の窓口となるのは、各校に必ず1名は配置されている「特別支援コーディネーター」と呼ばれる先生です(管理職の先生や支援学級の担任の先生などが、兼任している場合もあります)。
特別支援コーディネーターの先生が中心となって、担任の先生や、通級・支援級の先生、校長先生などの校内の先生方と保護者とをつなぎ、チームとして、その子に合った支援方針を立ててくれます。特別な支援を希望する場合、まずは、この先生にアポイントをとって、相談してみるのがいいでしょう。 また、各校を巡回するスクールカウンセラーの先生も、親と学校との間に入り、親の悩みを聴いた上で、学校側にも希望を上手に伝えてくれたり、子ども本人の相談に乗って頂けます。複数の学校を一人で担当している場合が多く、予約待ちになることもあるので、相談の希望があれば、早めにアポイントを入れるといいでしょう。
その子に合った環境や、ほんの少しの大人の手助けがあれば、「できる」「取り組める」ということは本当に多いものです。そして、「支援級か、通常級か」の二択で思いつめずに、その子の個性や成長に合わせて、あらゆる選択肢を柔軟に検討できるといいでしょう。
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