学習面でも、視覚支援や教具などを使って、実際に体感できると理解しやすくなります。
またLD(学習障害)がある場合、その子に合わせて負担感を減らすサポートや、ICT機器や道具を工夫することで、学習に対するハードルをぐっと下げて、取り組みやすくしてあげられます。一斉一律の学習スタイルが合わない子でも、「その子に合った学び方」で、分かること・できることは沢山あります(うちの実例は、HP>Blog>「発達障害と受験・勉強法」カテゴリーをご参考下さい)
■LDとは…
LDとは、学習障害/局所性学習症(SLD)のことです。
学習に対する理解力が十分ある子でも、LDの特徴があると、字を書く・覚える・思い出すのが苦手だったり(書字障害)、文字を正確に読み取りにくかったり(読字障害)、単純な計算ができなかったりして(計算障害)、十分に実力を発揮できず、例えばテストで答えは分かっているのに、字が書けずにバツになってしまう…など、本人も親も悔しい想いをしていることがあります。
LDは動体視力、目→脳→手指の連携、ワーキングメモリ、体幹やバランス感覚の弱さや未発達からくる不器用さなど、学習に必要な脳や身体の使い方の「局所的な苦手さ」によって起こるようです。本人の努力不足が原因ではないので、字がうまく書けない子に漢字書き取りの猛特訓などを強いることなどは、本質的な改善にはなりません。
これらの特徴は地道な療育(発達支援)などによって、徐々に改善してゆける可能性はありますが、まずは道具や教具を工夫したり、親が負担を減らすサポートをしていくことで、宿題などに取り組みやすくしてあげることができます。
宿題サポート法
学習へのハードルが高い状態の子に、毎日強制的にやらせることは、子どもの勉強嫌いを加速させてしまう可能性がある上、親にとっても負担が大きなことでしょう。
宿題の時間が嫌いだと、勉強も嫌い、学校も嫌い、と不登校の原因につながっていく可能性もあります(うちはありました!)
それよりも、できるだけハードルを下げてあげるサポートをした方が、お互いに効率よく取り組むことができます。
例えば、親が漢字書き取りの下書きをしてあげることで、動体視力が未発達な子にとっては、ドリル→ノートの視線移動の負担を減らすことができます。
また、文字のカドなどの認識力が弱い子も、なぞり書きで正しい文字を書くことができます。
筆算のケタがそろわずうまく計算できない場合は、タテに線を入れたり、マス目を引いたりすることで見やすくなり、計算ミスが減ります。
ワーキングメモリの弱い子や九九や計算の手順が覚えられない子には、九九表や計算の手順カードなどを作って机の隅に置き、参照しながら取り組むことができます。
また、筆算の繰り上がりの数字を記憶・メモする負担が大きい子は、一時的に指で覚えておく、などの手軽な工夫もできます。
音読の苦手な子には読んだ部分を下敷きで隠したり、教科書の行の横に線を引いてあげる、言葉を文節や単語で区切る、読みやすい色のカラーファイルや下敷きを重ねる、などの工夫で文字が見やすくなります。
また不器用な子には使いやすい鉛筆や定規、コンパスなどを選んだり、滑止めを貼って改良したりすることで、作業性が良くなり、負担が減ります。
学校側へお願いできれば、マス目の大きなノートを使ったり、プリントを拡大コピーして貰ったり、補助ツール(AT)を待ち込んだりして、本来の学習に集中できるようにしてあげるといいでしょう。
それでも宿題に取り組めない場合もあります。
漢字もうまく書けたところを部分的にほめたり、作業に完璧を求めず、「雑でもとにかく終わればよし」とか、「数行だけ丁寧に書ければOK」などこちら側のほめラインを下げて、少しでも取りかかれたらほめて認めていきます。
親が行う丸つけも、部分的に丁寧に書けたところがあれば、そこに小さく花丸をつけて、訂正はしないでおくと、次第に丁寧に書ける回数が増えてきます。
宿題をとにかく終われば、ポイントやおやつなどの「ごほうび設定」をするのもいいでしょう。
ただし、あまりに子どもの負担が大きい場合は、発達小児科や検査機関などの専門家の意見書などをもらって、合理的配慮をお願いし、宿題の量を減らしてもらう…などができるよう、担任の先生に相談するのも一つの手です。
教え方の工夫
学習面でも「見える化」を基本に、図やイラストを使ったり、実際に見て触って動かし、体感的に理解できるように工夫すると、ずっと分かりやすくなります。
数字や時間などの抽象的な概念も、見えるように工夫した教具だと分かりやすく、イラストやマンガ、写真などを使って漢字や言葉のカードを作っておくと、印象に残り、語彙を増やす手助けになります。
お菓子を数えたり分けたりしながら食べたり、お金を数えてお小遣いを貯め、欲しいものを買ったりする経験も、家庭ならではのとても効果的な学習です。
教科書を読んだだけでは理解がすすまない子も、他の感覚を使ってみると、理解しやすい・情報が入りやすいことがあります。
その子に合った学び方を見つけ出せると、学習効率があがり、自信をつけていくことができます。
例えば九九を覚えられない場合、視覚優位タイプの子には、レゴやドットバーなどで数の階段を作ったり、正方形の九九の表をタイルで埋めたりして、法則性を視覚的に気づかせると、かけ算の本質的な理解ができることもあります。
聴覚優位タイプの子には、市販されている「九九ソング」などのCDをいつも聴いていると、すらすら出てくるようになります。これはいわゆる「丸暗記」ですが、「九九を覚えられた!」ことが自信になるので、そこを入り口に教具等を使って、ゆっくりと本質的なかけ算理解をしていくこともできます。
また、玉そろばんや数字盤などの市販教具にも優れたものがあり、スマホやタブレットのアプリやテレビゲームでも、楽しく学習できるものなどもたくさん出ています。これらは子どもの興味を引きやすく、学習意欲の落ちている子でも取り組みやすいでしょう。
電子機器の積極的な利用には、各家庭での方針などがあるかと思いますが、LDのある子は特に、スマホやタブレットの写真・メモ、ボイスレコーダー、ワープロ、音声読み上げ機能などを使えば、板書を写す負担や文字を読む負担を減らすことができ、ADHDのある子も、写真・動画・学習系のゲームアプリの活用などで短期記憶や注意力の弱さを補うことができます。
ICT機器には、タイマーやスケジュール、リマインダーなど、学習スケジュールや自己管理をしていくうえで有効な機能もたくさんありますので、苦手を補う補助ツールとして、早いうちから使い慣れておくのも一つの方法です。(学校での学習補助ツールの使用や、ダブレットの持ち込みなどの合理的配慮のお願いの仕方については、「学校との連携」記事をご参照下さい)
また、ICTを活用した通信教育や個別指導塾などでも、無学年式・個別最適化された学習などを取り入れ、学年にとらわれずにその子のペースで学べるように工夫されていることもあります。
LDのある子を始め、その子に合った学び方と、苦手な作業を補う補助ツールを使いながら、学びのハードルを下げることで、学習理解が進み、宿題などもその子なりに取り組めるようになっていきます。