合理的配慮への理解と啓発〜合理的配りょを「ズルい」と思う子へのお手紙 -無料ダウンロード
- 楽々かあさん(大場美鈴)🇯🇵
- 3月28日
- 読了時間: 7分
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■合理的配慮への理解と啓発
発達障害を含む、障害のある子ども・大人の方に対する合理的配慮の提供が、公共・民間事業者共に法的義務となった「改正障害者差別解消法」が2024.4より施行されて、1年が経ちました。 (参考:内閣府「合理的配慮リーフレット」)
私がよく行くスーパーや飲食店などを見る限り、一般的な社会の中では、さほど大きな変化はないような気もしますが……。
それでも、この春より長男が再入学することになった私立大学では、入学前からとても「合理的に」対応してくれ、不安なく通えそうで安心しました(おかげさまで、第一志望に合格しました!🌸)。
このように高等教育機関では、先行していた国公立大学に加えて、多くの私立大学などでも、配慮の実施とノウハウの蓄積は、着実に進んできている印象です。
その一方で、公立小学校などであっても、まだまだ学校側の理解が得られなかったり、必要な配慮を受けるハードルが高かったり……。
あるいは、正当な配慮にも関わらず、クラスの子達から「ズルい」「ひいき」と言われることや、他の保護者から「不公平」だとクレームが入ることを心配して、配慮を希望しない親子さんもいるかもしれませんね。
それとも、配慮を実施する前から、他の子どもや保護者からの反応を学校側が恐れる余り、「前例がありません」「もし、何かあったら…」「特別扱いできません」……なんて断られたケースも、もしかしたら、あるのではないでしょうか。
(参考:同リーフレットp.5「対話の際に避けるべき考え方」)
まだまだ、世の中全体には「合理的配慮」という言葉自体が知られてないようなので、それに対する理解や説明も十分ではないように思います。理解が広まらないと、「実績」も増えていかないので……。
でも、周りの子/人達の理解が得られない時に、相手側の「理解が足りない」「意識が低い」みたいに受け取ってしまうと、何も前進していかないように、私は思っています。
相手が「ズルい」「ひいき」「不公平」と感じる時には、相手側にも何かしらの事情や理由が背景にあるからで、それはもちろん、直接的に、その障害のある子のせいではないのだろうけれど、こちら側も、そういった感情に対する一定の理解や配慮をすることで「歩み寄り」「相互理解」ができると思います。
また、急に勝手に上から目線で押し付けられたら受け入れられなくても、相手にわかりやすい言葉や例で丁寧に説明したり、納得できる理由と根拠や、相手にとっての利点を伝えたりすれば、理解できること・受け入れられることは、どんな場合でも、どんな子・どんな人にも結構あるのではないでしょうか。
そこで、微力ながら、合理的配慮への理解と啓発の一助となるべく、合理的配慮を「ズルい」と思う子へ、私なりのお手紙を書きました。
お手紙は、一般的な発達段階では、社会性が育って仲間意識が強くなる、小学校3・4年生〜くらいのお子さんを想定した言葉で、身近な例えを交え、「自分ごと」として理解しやすいように説明しています(PDF版は、読みが難しい字にルビを振りました)。
うちの経験上、これくらいの時期〜思春期頃までが、子ども達の間で「違い」に対して最も過敏な反応が起きやすい気がしたので……。
以前の「聴覚の過敏症についてのお手紙」と同様、学校側から配慮に当たっての説明を求められたり、クラスの子達に理解をお願いしたり、あるいは、事前に「合理的配慮」について子ども達に啓発したい場合など、保護者・お子さん自身・先生・支援者など、どなたでもご利用頂けます。
<活用例>
お子さんが教室でみんなと違うモノを使用したり、特別に人のサポートがついたりする場合などに、保護者の方からこのお手紙を先生に渡して、子ども達に説明してもらう
学校の先生が、子どもに「なんで〇〇くんだけ、いいの?」などと障害のある子への配慮について聞かれた時に、説明のしかたの参考にしたり、クラス全体への配布物や掲示物として活用
福祉や人権に関する授業の一環で、資料として配布する
文末リンク及び「楽々かあさん公式HP」より、A4用紙1枚にまとめたPDFが無料ダウンロードできますが、以下にも、お手紙の内容を全文掲載しますので、必要に応じてテキスト(ルビなし)コピペ/画像保存して、学校や支援施設等の非営利の配布物等に、文章とイラストをお使い頂いてもOKです。
(※ただし、文章の改変、商用利用は不可。全文掲載及び一部引用の場合は、「出典:楽々かあさん公式HP 」またはこの記事のURLをご明記ください。詳しくは「利用規約」をご参照ください。)
■合理的配慮を「ズルい」と思う子へのお手紙(全文掲載) 文とイラスト/楽々かあさん
合理的配りょを「ズルい」と思う子へ
もしも、あなたのクラスで、なにか特別な理由があって、みんなとちがう方法で学んだり、みんなとちがうモノが使えたり、大人がサポートしたりすることが、先生や学校からゆるされている子がいたとして……
それをあなたが「ズルい」「ひいき」「不公平」だと感じたとしても、それは正直なきもちだと思います。だって、あなただって、まだ大人の助けが必要な、子どもなのだから。
でもね、少しだけ、想像してみてください。

近視の子がメガネをかけること。
花粉症の子がマスクをつけること。
食物アレルギーのある子が、みんなとちがう給食を食べること。
たぶん、これを「ズルい」と思う人は、いないのではないでしょうか。
みんなと一緒に不自由なく健康にすごすために、メガネも、マスクも、別の給食も、それぞれの子に必要だから、教室では「それが当たり前」になっているでしょう?
これと同じで「みんなと一緒に生きる上で、すごく困っていることがある人の、それぞれの特別な理由に合わせた、当たり前の工夫やサポート」を「合理的配りょ」といいます。
「合理的配りょ」は、日本のルール(法律)で、
病気や障がいなど、なにか特別な理由がある人には、例えば、学校や会社、駅や乗り物、 お店などは、その人と相談しながら、環境を整えたり、モノを工夫したり、人のサポートをしたり...など、その人が困らないための「配りょ」を、できるだけしてください
……と決められています。もちろん、困っている子どもにも、です。
そして、もしも必要な時には、あなただって、ちゃんと「配りょ」してもらえます。
近視の人が「がんばって、遠くも見えるようになって」と言われてもむずかしいように、
だれにだって「どんなにがんばっても、できないこと」はあります。
ですから、もし、あなたに「どんなにがんばっても、できないこと」があって、学校や毎日の生活ですごく困っている時には、その理由が特別なのかは分からなくても、「サポートをお願いします」「助けて下さい」って、周りの大人に相談してみてくださいね。
それは、ズルでも、ひいきでも、不公平でもなくて、みんなが一緒に生きていく上で、「必要で、当たり前のこと」なのですから。
無料ダウンロード→「楽々かあさん公式HP」より
【支援ツールのシェア】A4-PDF版
こちらのA4-PDF版は、以下のリンク及び、楽々かあさん公式HP>Share/支援ツールのシェア4 より、どなたでも無料ダウンロードできます。HPの利用規約にご同意の上、ご利用下さい。
イラストのみ、配布物・掲示物等でご利用になりたい場合は、楽々かあさん公式HP>Share>お裾分けイラスト からも配布しています。
2025.4.2の世界自閉症啓発デーに寄せて。
■この記事を書いた人の著書
「発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた 楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換」大場美鈴・著(あさ出版/2020.6) →Amazonで見る